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2009年2月25日(水) 川崎競馬場 2100m

 

真骨頂の鋭い末脚を披露、引退レースで見事重賞初制覇

 「正直言って無事に帰ってきてくれればと思っていたので、勝つというよりも無欲でした」とニシノナースコールを管理する尾形充弘調教師。牝馬ながら7歳まで長きに渡って競走生活を続けてきたが、このエンプレス杯JpnIIがラストランだった。
 「レース前に引退レースと言われたので、悔いの残らないようにして結果に結びつけたいと思っていました」と吉田豊騎手。
 逃げると思われていた白毛馬ユキチャンが出遅れ、スタート直後に場内から落胆の声が上がる波乱の幕開けとなった。
 抜群のスタートを切った船橋のシスターエレキングが積極果敢に先手を取ると、昨年の覇者サヨウナラが2番手を追走。上位人気のヤマトマリオンとユキチャンを見る形で、ニシノナースコールは中団付近からレースを進めた。「最初の3〜4コーナーで、馬の後ろに入れるまで行きたがりましたが、あとは折り合ってくれました」(吉田騎手)。
 1周目スタンド前ではユキチャンの後ろをつけていき、2周目の3コーナーではヤマトマリオンに連れて上がっていった。「道中いい位置取りで折り合えたので、終いもいい脚を使ってくれると思っていました」(吉田騎手)。
 気持ちよく先頭を走って逃げ粘るかと思われたシスターエレキングを、残り100メートル付近で一瞬にして抜き去ると、あとはその差を広げる一方。ニシノナースコールは真骨頂でもある鋭い末脚を披露して、見事有終の美を飾った。
 「小回りが向くとは思いませんが、左回りはいい馬です。道中はいつもより前に位置取ることができて、折り合いをつけられたのが勝因だと思います」(吉田騎手)。
 デビューした当初は芝を中心に走り、05年の秋華賞では豪脚を見せて3着に入ったことでも知られる。「体の使い方はうまかったんですが、最初の頃は体質が弱くて、寒い時季はすくんで硬くなって、熊のように毛も伸びました。6歳くらいになってから良くなってきて、晩成だったんでしょうね」(尾形調教師)。坂路とダートコースを中心に大事に仕上げてきたという。デビューしたころは420キロ台だった小柄な馬体は、最終的には450キロ台まで増えていた。
 「無事に(牧場に)帰してやることができてホッとしています」と、安堵の表情を浮かべていた尾形調教師。ニシノナースコールと長年苦楽を共にしてきた関係者たちにとって、何物にも代えがたい最高の瞬間であっただろう。
 デビューから33戦目にして、最後の最後につかんだ悲願の重賞タイトル。そんなドラマチックな結末があるからこそ、競馬はおもしろい……。

 
吉田豊騎手
  この馬にやっと重賞を勝たせることができて、本当にうれしいです。長距離だし外枠だったので、折り合いだけを心配していましたが、うまくいって良かったです。ダートに転向してからもへこたれずに一生懸命走ってくれました。  
 
尾形充弘調教師
  なかなか重賞を取ることはできませんでしたが、最後にチャンスを生かしてくれて最高ですね。ナースコールの追っかけというファンの方たちも応援に来てくれてうれしかったです。7歳まで本当によく頑張ってくれました。
 
 


 


 

取材・文:高橋華代子
写真:いちかんぽ


 
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