SPECIAL COLUMN Vol.9

未来の優駿たちによる、熱き競演が濃い!未来の優駿たちによる、熱き競演が濃い!

執筆者 井上紀彦 競馬愛好家・競馬セミナー講師 23歳で競馬に出会い、今や365日競馬三昧。一人でも多くの方に競馬の魅力を伝えるべく、川崎競馬などで競馬セミナーを実施。

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  • 今年、節目となる10年目を迎えた「未来優駿」。今年、節目となる10年目を迎えた「未来優駿」。

    2008年に創設された「未来優駿」は、毎年秋に各地の2歳主要競走を約1ヶ月の短期間において、集中的に施行するシリーズ。
    今年は10月8日(日)に佐賀競馬場で行われる九州ジュニアチャンピオンを皮切りに、川崎、盛岡、
    名古屋、門別、園田、金沢の全7場で行われます。
    これまで、シリーズ対象レースの優勝馬の中には、2008年の九州ジュニアグランプリ優勝馬ギオンゴールド、2009年の若駒賞優勝馬ロックハンドスター、2010年の兵庫若駒賞優勝馬オオエライジン、2011年の若駒賞優勝馬アスペクト、2012年のゴールドウィング賞優勝馬ウォータープライド、2013年の若駒賞優勝馬ライズライン、2014年の若駒賞優勝馬ロールボヌール、2015年の兵庫若駒賞優勝馬マイタイザン、2016年の兼六園ジュニアカップ優勝馬ヴィーナスアローといった面々が翌年に行われた地元のダービーを制しました。
    「未来優駿」はその名の通り、11月以降の2歳ダートグレード競走、翌年のダービー、その後の重賞競走の行方を占う重要なシリーズとして、未来へ羽ばたく優駿たちの熱い戦いが繰り広げられます。
    ここからは、昨年のレース結果と今年の見どころや傾向を紹介しましょう。
  • 九州ジュニアチャンピオン(佐賀競馬場)九州ジュニアチャンピオン(佐賀競馬場)

    2011年までは荒尾競馬場で行われていた九州ジュニアグランプリが本シリーズの対象レースでしたが、荒尾競馬場の廃止に伴い、翌年より佐賀競馬場の九州ジュニアチャンピオンが新たに対象レースに組み込まれました。佐賀所属馬の限定レースとなっており、シリウス特別の2着馬までに優先出走権が付与されています。
    昨年はシリウス特別組から、ハクユウロゼ(1着)とロトスキャンダル(2着)、JRA認定レースを勝ち上がったスーパーマックスとオヒナサマの4頭が上位人気となり、他馬を大きく引き離す単勝オッズとなりました。
    逃げて2連勝中のオヒナサマは、絶好の1番枠からスタートダッシュを決めあっさり先頭。2番手にはここまで3戦無敗のスーパーマックス、そのすぐ後ろにロトスキャンダルといった隊列。最終的に1番人気となったハクユウロゼはシリウス特別同様、やや掛かり気味に4番手からの競馬となりました。
    1周目を回ると、早くも4頭が後続を大きく離す展開となり、最後の直線へと向かいます。終始、逃げるオヒナサマをぴったりマークしていたスーパーマックスが抜け出し、4馬身差の圧勝。2着にはロトスキャンダル、3着に逃げたオヒナサマ、ハクユウロゼは4着でした。翌年、スーパーマックスは九州ダービー栄城賞を制し見事ダービー馬の称号を手中に収めました。
    九州ジュニアチャンピオン歴代優勝馬でその後活躍した馬といえば、代表格は2010年の覇者ウルトラカイザー。現在は門別競馬に在籍しておりオープンクラスの常連として活躍を続けています。
    レースの傾向としては、逃げ、先行馬が好成績を収めていること、佐賀競馬のトップジョッキー山口勲騎手が当レース通算4勝、東眞市調教師の管理馬が2011年から5連覇していることなどが挙げられます。
  • 鎌倉記念(川崎競馬場)鎌倉記念(川崎競馬場)

    2001年に創設された鎌倉記念は、2015年に「未来優駿」の対象レースとなりました。
    2歳馬による交流重賞競走として施行されており、賞金も高く、毎年、南関東所属馬をはじめ、全国の素質馬が集結し熱戦を繰り広げています。これまでトキノコジロー(羽田盃優勝)、ニシノファイター(北海優駿優勝)、インサイドザパーク(東京ダービー優勝)がその後の大舞台でも活躍しています。なお、優勝馬には全日本2歳優駿、上位3着までに入線した牝馬にはローレル賞への優先出走権が付与されます。
    昨年は、紅一点ながらデビューから2連勝中の船橋所属馬ゴーフューチャーが1番人気に支持され、2番人気は3連勝中のストーンリバー、3番人気にキャンドルグラスといったホッカイドウ競馬からの遠征馬が上位人気となりました。
    三強の様相を呈したレースは、内枠から好ダッシュを決めたゴーフューチャーがハナを奪い、外枠勢が先行する隊列。ストーンリバーは好位の4番手を追走しました。向正面から3コーナーにかけて後続勢も動き出し、4コーナーでは一団となって最後の直線へ。残り200m地点で後続に2馬身ほどの差を付けていたゴーフューチャーの逃げ切りと思いきや、ストーンリバーがゴール手前で差し切り、見事勝利しました。ゴーフューチャーは2着、道中は最後方に位置していたティーケーグラスが3着、キャンドルグラスは4着。
    長距離輸送と初コースを克服して鎌倉記念を制したストーンリバーは、次走の北海道2歳優駿で4着と善戦し、2着ヒガシウィルウィン(今年の南関東2冠馬)とは僅か0.3秒差でその実力を証明しました。
    レースの傾向としては、牡馬が過去15回のうち14回勝利。また、近年は北海道からの遠征馬が活躍している点や500kg前後の大型馬が好走している点もポイントに挙げられるかもしれません。
  • 若駒賞(盛岡競馬場)若駒賞(盛岡競馬場)

    「未来優駿」が創設された2008年からシリーズの対象レースとして行われており、岩手競馬に所属している2歳馬による重賞競走です。ビギナーズカップがトライアルレースとなっており、上位3頭には若駒賞への優先出走権が、さらに若駒賞上位3頭には、岩手競馬の2歳チャンピオンを決める一戦「南部駒賞」への優先出走権が付与されます。
    近10年の優勝馬のうち、5頭が翌年の岩手ダービーを制するなど、若駒賞は岩手競馬の未来を担う若駒たちの重賞競走として知られています。
    昨年は、デビュー前から注目を集めていた2戦2勝のベンテンコゾウ(1番人気)、トライアル優勝馬サンエイリシャール(2番人気)、安定感のあるリュウノチーノ(3番人気)が人気を集めました。
    レースは、大方の予想通りニードアフレンドがハナを奪い、2番手にベンテンコゾウ、サンエイリシャールは4番手を追走し、レースは縦長の展開となりました。4コーナー手前でベンテンコゾウがジワジワと差を詰めにかかると、サンエイリシャールも満を持して外目を周り先頭集団へ。直線で先頭に躍り出たベンテンコゾウをあっさり交わし、サンエイリシャールが勝利しました。2着はベンテンコゾウ、3着に伏兵スティックセニョル、リュウノチーノは離れた5着。
    サンエイリシャールは7月9日現在、13戦【5.4.3.1】で抜群の安定感を誇り、さらなる活躍が期待される一頭です。
    レースの傾向としては、岩手競馬のリーディング争いを演じている山本聡哉騎手と村上忍騎手が当レース2勝を挙げているほか、前走で好成績を収めている馬が勝利していることから、大敗からの巻き返しは難しいかもしれません。
  • ゴールドウィング賞(名古屋競馬場)ゴールドウィング賞(名古屋競馬場)

    ゴールドウィング賞の前身となる中日スポーツ杯(秋)が創設されたのは1962年。もともとはアングロアラブ系(アラブとサラブレッドの混血種)の2歳馬によるレースとして施行されていましたが、1971年からサラブレッド系の東海地区限定レースとなりました。その後、出走条件などの変革を重ね、現在はJRA認定競走(東海地区所属限定)として施行されています。
    「未来優駿」創設時からシリーズの対象レースとして行われており、東海地区に属す2歳馬の登竜門的な役割を果たしているレースです。
    昨年は、北海道から名古屋へ移籍後、4戦してパーフェクト連対中のミトノリバーが1番人気、すでに4勝を挙げていたハーバーフライトが2番人気でレースを迎えました。
    レースは、ミトノリバーが好スタートから楽に先頭を奪い、2番手にハーバーフライト。人気上位馬が後続を引き連れる展開となり、落ち着いた流れで進みました。3コーナーを過ぎるとハーバーフライト以下がスパートを仕掛ける中、ミトノリバーに騎乗した岡部誠騎手の手綱はほぼ持ったままの状態で最終コーナーへ。直線で気合を入れると後続を引き離し、追いすがるハーバーフライトを振り切り2馬身半差の完勝でした。
    明け3歳となったミトノリバーは、今年いまだ未勝利。2歳時のようなスピードを生かしたレースで復活を期待したいところです。
    レースの傾向は、前走で連対している馬が好成績を挙げており、前走の勢いそのまま、中2~3週で挑んでくる馬が勝利しています。また、岡部誠騎手はゴールドウィング賞2連覇中で今年勝利すると史上初の当レース3連覇、通算でも最多勝利数単独1位が懸かっています。
  • サッポロクラシックカップ(門別競馬場)サッポロクラシックカップ(門別競馬場)

    2009年に特別競走として創設されたサッポロクラシックカップは、2014年に地方競馬の交流重賞競走に格付けされました。同条件(門別競馬1200m)で行われるトライアルレースのイノセントカップ2着以内の馬に優先出走権が付与されており、2014年コールサインゼロ、2015年リンダリンダが両レースを勝利しました。なお、創設初年度から「未来優駿」の対象レースに組まれています。
    昨年は、出走メンバー中、ダート1200mで断トツの持ちタイムを持つローズジュレップが単勝オッズ1.2倍の圧倒的な1番人気に支持され、イノセントカップ3着馬フライングショットが2番人気(7.0倍)、3番人気以下は単勝オッズ10倍以上という1強ムードでレースを迎えました。
    好ダッシュを決めたストレンジウーマンがハナを奪うも、ここまでスピードの違いで逃げて3勝を挙げているローズジュレップが、3コーナー手前で早くも先頭へ。4コーナー手前では楽な手応えで後続を3馬身ほど引き離し、最後の直線へ入りました。ハイペースの影響もあったのか、先行馬が脱落していく中、4コーナーで内からスルスルと脚を伸ばしてきたフライングショットが逃げるローズジュレップを捉えにかかり、残り100m地点で射程圏内の1馬身差。ゴール手前できっちり交わしサッポロクラシックカップを制しました。ちなみに見事な騎乗を魅せた鞍上の五十嵐冬樹騎手は、前週に通算勝利数2000勝(中央競馬含む)を達成したばかりでした。
    フライングショットはその後、船橋競馬へ移籍し、今年に入り3連勝を飾るなど活躍しています。スプリント戦線において、今年の飛躍が期待される一頭と言えるかもしれません。
    レースの傾向としては、過去8年で1番人気は僅か1勝(2015年リンダリンダ)と不振で波乱傾向にあります。前哨戦で注目はやはりトライアルレースのイノセントカップ出走組。昨年まで4年連続でサッポロクラシックカップを制しています。また、桑村真明騎手が当レース4勝を挙げている点も注目です。
  • 兵庫若駒賞(園田競馬場)兵庫若駒賞(園田競馬場)

    2歳重賞シリーズ「未来優駿」が創設された2008年より、対象レースとして施行されている兵庫若
    駒賞。これまでトーコーヴィーナスやオオエライジンなどが優勝しており、今や出世レースとして注目
    されている重賞競走です。翌月に同条件(園田競馬1400m)で行われるダートグレード競走「兵庫ジュニアグランプリ」の前哨戦としても注目される重要な一戦であり、地方競馬ファンにはお馴染みのレース。
    昨年は12頭中、スターレーンが3勝、その他は1勝馬が5頭、未勝利馬が6頭というやや小粒な感も否めない出走メンバーでした。当然、人気の中心はスターレーン。2走前に同コースで圧勝したキューティハーバーが2番人気、JRA認定競走4着のナチュラリーが3番人気となりました。
    スタート直後から激しい先行争いが繰り広げられましたが、1コーナー地点で先頭に立ったのはキショウ、2番手にコパノアーデン、3番手にナチュラリー、スターレーンは少し離れた4番手を追走する隊列となりました。ハイペースで終始競り合っていた前の2頭が3コーナー手前で力尽きると、ナチュラリーが2頭をあっさりと交わし先頭に躍り出ました。スターレーンは3コーナー過ぎからスパートし、外目から一気に捉えにかかるも、直線に向いたところでナチュラリーがもうひと伸び。猛追するスターレーン、セカンドインパクトを退けました。兵庫県競馬史上初となる未勝利馬による重賞制覇という”おまけ”もついた嬉しい初勝利となりました。
    その後、しばらくは善戦止まりのレースが続いていましたが、今年8月、地元で待望の2勝目を挙げました。これをきっかけに更なる飛躍が期待されます。
    レースの傾向としては、デビューから4戦以内の馬が活躍しており、1番人気馬は通算【6.1.0.2】と好成績を収めています。また、下原理騎手が4勝、木村健騎手が3勝と9回中7回が両者によるもの。当然、今年も要注意のジョッキーとなるでしょう。
  • 兼六園ジュニアカップ(金沢競馬場)兼六園ジュニアカップ(金沢競馬場)

    1999年に創設された兼六園ジュニアカップは、2012年までJRAの朝日杯フューチュリティステークス(旧・朝日杯3歳ステークス)のステップ競走として位置づけられ、1着馬にはデイリー杯2歳ステークスや東京スポーツ杯2歳ステークスなどのトライアル競走への優先出走権が与えられていました。兼六園ジュニアカップの初代王者レジェンドハンターは、トライアル競走1着、朝日杯3歳ステークス2着と強豪相手にその実力を見せつけました。その後、競走条件の変更を重ね、2013年に北陸地区所属馬限定レースとなり、「未来優駿」の対象レースに加わりました。
    昨年は、ここまで6戦5勝のヴィーナスアローが断然の1番人気(単勝1.1倍)、2番人気に連対率100%のサッキーヘラクレスが人気を集めました。
    レースは、大方の予想通りアガタピアスが逃げる展開となり、上位人気馬は揃って後方待機策で向正面へ。まず先に仕掛けたのは後方2番手にいたバーバリアン。2コーナー地点からグングンと加速し、3コーナー地点では一気に先頭へ躍り出て後続との差は3馬身以上。多くのファンが”ヴィーナスアローは届くのか“と不安を抱いた瞬間かもしれません。しかし、4コーナーに差しかかると満を持して仕掛けたヴィーナスアローはその差を詰めていき、ゴール手前で粘るバーバリアンをきっちりと交わし差し切りました。デビュー以来、最軽量となる418kg、さらに2歳牝馬でありながら負担重量56kgを克服しての勝利は感服するばかりです。
    2017年は、JRAのクイーンカップ(10着)やフラワーカップ(13着)へ挑戦後、石川ダービーを制覇。デビュー以降、900mから2000mで勝利しており、選択肢が広がります。2戦2敗のヤマミダンスには苦杯を嘗めているだけに再戦を期待します。
    レース傾向としては、一般的に外枠有利で差しが決まる印象があります。ある程度のスタミナが要求されるだけに1500m前後の距離実績も重要と言えるかもしれません。また、金田一昌調教師は現在3連覇中。今年も管理馬が出走するようなら注目です。
    “来年のダービー馬はこの馬だ”この馬が活躍しそうだ”といった馬主気分も味わえる2歳戦。
    今年の「未来優駿」は、目が離せません!