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第14回 サンライズカップ 10/9(木) 門別 1700m


北海道2歳優駿へ直結する重要な一戦
「サンライズカップ(門別)」は、
スウェプトオーヴァーボード産駒の
タケルオウジが力強く抜け出して快勝!




 今年で第14回を迎える「サンライズカップ(門別・ダ1700m)」は、2001年に創設された比較的新しい2歳馬の重賞競走だが、今やダートグレード・北海道2歳優駿へ直結する重要な一戦としてすっかり定着してきた。2004年のモエレアドミラル、2009年のビッグバン、そして昨年のハッピースプリントが当レース優勝をステップに北海道2歳優駿を制覇。また2006年の2着馬トップサバトンも、次走の北海道2歳優駿で圧巻の走りを披露し、ダートグレードホルダーに輝いている。

 今年、そのダートグレード前哨戦ともいえる一戦にエントリーしてきた馬は12頭。いずれ劣らぬ将来有望な若駒が顔を揃えたが、出走馬の馬体重が発表されると同時に場内がざわめいた。圧倒的な1番人気に推されると目されていたオヤコダカの馬体重が、前走から『プラス20kg』。もともと500kgを優に超える大型馬ではあるが、その『プラス20kg』という数字は、「先を見据えた余裕残しの仕上げでは?」「いや、父も500kgを超える大型馬だったので成長分だろう…」などなど、戦前にさまざまな憶測をよんだ。

 それでもやはり、圧倒的な支持を集めたのはオヤコダカ(牡、父サムライハート)。前走・ブリーダーズゴールドジュニアカップの圧勝劇が記憶に新しく、大幅な馬体重増も人気を落とす要因にはならなかったようだ。順調にダートグレードへ駒を進め、ホッカイドウ競馬代表として中央馬を迎え撃ってほしいという期待は大きく、単勝オッズは1.4倍を示していた。

 2番人気(6.1倍)は、夏場にJRA北海道シリーズ(函館2歳S、コスモス賞)で芝レースを経験し、ダート競馬は6月のウイナーズチャレンジ以来となるタケルオウジ(牡、父スウェプトオーヴァーボード)。芝の2戦は結果が出なかったが、ダート競馬は2戦2勝で底を見せていない魅力がある。オヤコダカともこれが初顔合わせとなり、中央の強豪馬にもまれてきた経験を活かすことができるか、同馬にとっては試金石の一戦となりそうだ。

 10倍を切るオッズはこの2頭のみで、3番人気(10.9倍)にブリーダーズゴールドジュニアカップ3着馬フジノサムライ(牡、父スクリーンヒーロー)、4番人気(11.3倍)にオープンを2勝しているクラバズーカー(牡、父スターキングマン)、5番人気(17.4倍)にここまで3戦2勝のヘブンズゲート(牡、父バゴ)とつづいた。

 スタンド前のスタート地点に12頭が集まってゲートイン。ほぼ一斉の飛び出しだったが、フジノサムライとクラヴィクトリー(牡、父トワイニング)のダッシュがつかずに後方へ置かれ、最初のコーナーに差し掛かる。1番人気オヤコダカがスピードの違いで先手を取ろうとするところ、コーナーワークを利してグローリーキング(牡、父フサイチコンコルド)がハナを奪った。オヤコダカは無理せず2番手につけ、少し離れた3番手集団に紅一点のフォーティクイン(牝、父フォーティナイナーズサン)、ヘブンズゲート、クラバズーカー、ハニームーン(牡、父メイショウサムソン)らが並んで追走。2番人気タケルオウジはその後ろ、中団の外へ持ち出した。3~4コーナーでタケルオウジが外から徐々にポジションを上げていき、先行していたオヤコダカ、最内にポジションを取ったクラバズーカーらと並んで直線に入る。直線で先に抜け出したのは内のクラバズーカーだったが、馬場の真ん中から一完歩ずつ差を詰めたタケルオウジが残り100mあたりでこれを捕え、そのまま力強く押し切って先頭でゴールイン。2着には4コーナーで一旦置かれたハニームーンが鋭く伸びて1馬身半差まで詰め寄り、3着にはクラバズーカーがなんとか粘り込むという結果に。オヤコダカは4コーナーですでに手応えが怪しくなり、直線ではまったく伸びずに11着と大敗した。

 優勝したタケルオウジは、父スウェプトオーヴァーボード、母ロングビクトリア、母の父タニノギムレットという血統。祖母に1999年の栄冠賞、ラベンダー賞、函館3歳S(現2歳S)を制したホッカイドウ競馬出身の名牝エンゼルカロがいて、昨年の北海道サマーセールにて540万円(税別)で取り引きされた馬だ。これでデビュー以来、ダート競馬では無敗の3戦3勝。遠征による疲れや久々のダート戦といった不安の声を一蹴し、完璧な強さを披露して一躍、世代トップホースの座に躍り出た。まだまだ成長の余地もありそうで、さらなるビッグタイトルも望める逸材だろう。

 思い返せば、フレッシュチャレンジ、ウイナーズチャレンジを制したのち、JRA北海道シリーズの函館2歳S、コスモス賞で芝レースを経験し、このサンライズCに優勝するというのは、昨年のハッピースプリントとまったく同じ経歴である。ハッピースプリントはその後、北海道2歳優駿、全日本2歳優駿にも優勝し、『NARグランプリ年度代表馬』に輝いた。タケルオウジ陣営が意図してハッピースプリントと同じ道を歩ませているのかどうか定かではないが、当の馬自身は確実に結果を出してきている。11月6日のダートグレード「北海道2歳優駿」が、ますます楽しみになってきた。


井上俊彦騎手コメント
夏の芝レースでは結果が出ませんでしたが、春先から大きな期待をしていた馬なので、重賞を勝つことができて本当にうれしいです。今回は馬の状態も良かったですし、レース前から勝てる自信はありました。オヤコダカを意識して乗ったのですが、道中はまだ遊びながら走るようなところがあり、4コーナーでもあまり手応えがなくて少し焦りましたが、直線ではしっかりハミが掛かって力強く伸びてくれましたね。この先も期待しています。
 
林和弘調教師コメント
夏に遠征した疲れがあったので、回復するのをじっくり待ってここを使いました。期待というよりも、重賞でどれぐらいやれるか力を試す気持ちの方が大きかったのですが、私が思っている以上に馬は強かったですね。今日は100点満点のレースだったと思います。このレースの走りを見てから先を決めようと思っていたのですが、先ほどオーナーと話して北海道2歳優駿へ挑戦することにしました。順調に全日本2歳優駿まで駒を進めたいですね。
   
文:浜近英史(うまレター)
写真:中地広大(うまレター)