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第8回 ブリーダーズゴールドジュニアカップ 8/26(火) 門別 1800m


1着賞金500万円の2歳重賞ブリーダーズゴールドジュニアカップ(門別)は、
サムライハート産駒のオヤコダカが直線で圧倒的な強さを見せて快勝!



 ホッカイドウ競馬では最高格付(ダートグレード競走は除く)となる『H1』が与えられている2歳重賞「ブリーダーズゴールドジュニアカップ」。7月の「栄冠賞(H2)」、11月の「北海道2歳優駿(JpnⅢ)」と並んでホッカイドウ競馬2歳三冠競走の1つに組み込まれており、高レベルな地元馬同士で世代ナンバーワンホースを争う重要なレースとして位置づけられている。

 今年は初年度以来となる14頭が揃ってフルゲートでの発走となったが、一冠目の「栄冠賞」に出走していたのはオヤコダカ(3着)ただ1頭。夏の間、JRA函館、札幌へ遠征して芝レースで経験を積んだ期待馬を含め、さまざまな路線を歩んできた馬たちによる顔あわせとあって、ファンの興味を大きく惹き付ける一戦となった。

 混戦模様の中、2.7倍の1番人気に支持されたのは、JRA重賞「函館2歳S(GⅢ、芝1200m)」に挑戦して地元へ戻ってきたエンターザスフィア(牡、父ヴァーミリアン)。これまで1200m戦しか経験がないものの、2走前の「ウィナーズチャレンジ(ダ1200m)」でのちの「栄冠賞(ダ1200m)」1着~3着を完封しており、今回は船橋の左海誠二騎手を鞍上に配して必勝態勢で臨んできた。

 3.4倍と差のない2番人気に、こちらもJRAオープンの「クローバー賞(芝1500m)」に挑戦してきたオヤコダカ(牡、父サムライハート)。以下、3番人気(5.8倍)にダート1700m戦で1、1、3着という距離適性を見込まれたゲットザグルーブ(牡、父ヴァーミリアン)、4番人気(7.3倍)に前走の「ヴァーミリアン賞(2歳OP、ダ1800m)」で今回の出走馬4頭(フジノサムライ、ルコンポゼ、クラヴィクトリー、アロマベール)を退けているクラバズーカー(牡、父スターキングマン)と、ここまでが10倍を切るオッズ。フジノサムライ(牡、父スクリーンヒーロー)、紅一点のジェットシティ(牝、父カネヒキリ)らも10倍台でつづき、パドック解説者も「甲乙つけ難い」と舌を巻くほどの好メンバーが揃って、1着賞金500万円を懸けた戦いの火蓋が切られた。

 ほぼ一斉のスタートから、ハナを主張して抜け出したのはキタイノホシ(牡、父サウスヴィグラス)。父譲りの快速を飛ばしてペースを握る。オヤコダカが楽な手応えで2番手を追走し、フジノサムライ、エンターザスフィア、ルコンポゼ(牡、父パイロ)、ジェットシティらが先行集団を形成。向こう正面ではかなり縦長の隊列となり、淀みないペースを保ったまま3~4コーナーに差し掛かる。ここでオヤコダカが持ったまま逃げるキタイノホシに並びかけ、そのまま直線に入ると、後続をどんどん引き離す独走態勢に。鞍上の阪野騎手が「後続の脚音がまったく聞こえなかった」とレース後に振り返るほど、オヤコダカ1頭だけが次元の違う脚を繰り出して先頭でゴール板を駆け抜けた。結果的に外から2着に追い込んだジェットシティとは3馬身の差だったが、その着差以上にオヤコダカの強さが印象に残る快勝劇で「第8回ブリーダーズゴールドジュニアカップ」は幕を閉じた。

 オヤコダカは、父サムライハート、母オメガカリビアン、母の父フレンチデピュティという血統。父のサムライハートは、サンデーサイレンスとエアグルーヴの間に生まれた超良血馬で、2011年の「リリーC(門別)」優勝馬レイモニ(牝)や、昨年の「金沢プリンセスC(金沢)」を制したフリオグレイスー(牝)などを送り出してきたが、牡馬産駒の重賞勝利はこれが初めて。またオヤコダカの祖母は、1990年代後半にJRAの牝馬クラシック戦線を沸かせた活躍馬ゴッドインチーフという血統背景を持つ。デビュー当初から期待が高く、「栄冠賞」は2番人気、初芝の「クローバー賞」でも道営馬6頭の中では最も期待を背負って出走。これまではパドックで気性の幼い面を見せたりもしてきたが、このレースでようやく本来の力が存分に発揮できたという印象だ。

 秋の2歳ダートグレード「北海道2歳優駿」は、今回と同じ門別ダート1800m戦。中央馬も加わって相手関係はさらに強くなるが、その大舞台でも堂々と胸を張って主役を張れるレース内容だったように思う。ハッピースプリント級の活躍馬が今年も熱望されている中、ブリーダーズゴールドジュニアカップからその筆頭候補が誕生した。



阪野学騎手コメント
メンバーも揃っていましたが、前々走のようにすんなりとレースを運べれば、この馬の力を発揮できると思っていました。楽に2番手を追走し、道中は他の馬の動きを感じながら乗っていました。オヤコダカの強いレースを見せることができて、本当に嬉しいです。
 
原孝明調教師コメント
4~5番手からの競馬をイメージしていたのですが、ゲートの出が良かったので、鞍上の判断で前につけてうまく乗ってくれましたね。直線は思っていた以上の伸び脚を見せてくれました。まだまだ肉体的にも完成形ではないと思っているので、この先の成長が楽しみです。
  取材・文:浜近英史(うまレター)
写真:中地広大(うまレター)、NAR