ウエブハロン2017 ダービーシリーズ タイトル


 2006年に創設されたダービーウイークが、今年から「ダービーシリーズ(DS)」と装いを新たにして実施されます。  昨年までの6競走に加えて、高知優駿(高知)、石川ダービー(金沢)の2レースがシリーズに加わり、5月28日(日)から6月20日(火)までの日程で8つのダービーが行われることになります。

 ダービーシリーズを闘った馬たちからは、2007年のフリオーソをはじめ、最近ではハッピースプリントやカツゲキキトキトなど、その後も地方競馬の主力として活躍する馬が輩出されています。

 3歳ダートクラシック路線の頂点であるジャパンダートダービー(JpnⅠ)(7/12大井)に向けて、全国の3歳馬たちが鎬を削る「ダービーシリーズ2017」にご期待ください。
※下の“タブ”をクリックするとご覧になりたいレースの記事に切り替わります。

直線独走となって6馬身差
会心の騎乗で羽田盃の雪辱

 大井競馬場の場内は、5月17日に地方通算7000勝を達成した的場文男騎手の偉業を称え、赤と白星の的場カラーで彩られていた。その的場騎手にとって、東京ダービーは36回目の挑戦。今回のパートナーは前走京浜盃3着のブラウンレガートだ。その人気には、的場騎手のダービー制覇を願うファンの想いも反映され、単勝6.2倍の3番人気に支持された。
 それでも羽田盃の勝ち馬キャプテンキング、半馬身差で2着だったヒガシウィルウィンの一騎打ちムード。単勝オッズは、それぞれ1.8倍、3.7倍。2頭の馬連複は2.3倍となっていた。
 羽田盃では逃げ馬不在だったこともあり、1番枠だったキャプテンキングが先頭、ヒガシウィルウィンが2番手でレースを進める形になったが、今回はメンバーや枠順から前走とは異なる展開が予想された。やはり先手を取ったのは先行力のあるサイバーエレキングで、ブラウンレガートが3番手の内につけた。「とにかくキャプテンキングより前で」という森泰斗騎手とヒガシウィルウィンは5番手の外を追走。キャプテンキングは、その直後でライバルをピッタリとマークしていた。
 3コーナーでサイバーエレキングが後退し、2番手にいたカンムルが先頭に立ったが、外から持ったままの手応えでヒガシウィルウィンが上がっていた。一方、その後ろでキャプテンキングの矢野貴之騎手の腕が動き始めていた。
 直線に入ると、内を突いて伸びてきた的場騎手とブラウンレガートの姿にスタンドからは大歓声。しかし、それに勝る勢いで馬場の真ん中を突き抜けたのがヒガシウィルウィンだった。ぐんぐんと差を広げ6馬身差の圧勝。森騎手の左腕が大きく上がった。
 キャプテンキングは最後にブラウンレガートをとらえて2着。「スタートで少し後手を踏みましたがヒガシウィルウィンの後ろでレースを進められました。相手にこの差をつけられているので、今日は完敗です」と矢野騎手は振り返った。
 的場騎手は、「最高に上手く乗れました。これで負けたら仕方ない。また来年だね」と納得した表情。悲願の東京ダービー制覇は来年以降に持ち越しとなった。
 羽田盃のレース後、「大丈夫、次は逆転します」と言い切った森騎手の姿が印象的だったが、まさにそれを有言実行してみせたヒガシウィルウィンの勝利。「矢野騎手は自分だけを見ていると思ったし、自分も前の馬たちはまったく気にせずに後ろだけを意識していました。だからなるべく仕かけを遅らせて、3~4コーナーでも待て待てという感じで……」と森騎手。前走の雪辱を果たす会心の騎乗だった。「この馬とずっと積み重ねてきたものが今日は完璧な形で出せました」。表彰式のインタビューで語った言葉からは、馬とそれに携わる人たちとの信頼や絆のようなものが伝わってきた。
森泰斗騎手
移籍した頃は体形が子供でしたが、体つきがどんどん変わって、今日はオーラや風格が出ていました。道中もぴったり折り合いがついてリズムも完璧。直線ははじけましたね。この馬は道営の方々からバトンを受け取って船橋で大切に育てています。一戦ごとに力強くなっていますし順調に成長してほしいです。
佐藤賢二調教師
前走よりパワーアップして一番いい状態で臨めました。いい位置取りで折り合いもついていたし、キャプテンキングより前で思い通りの競馬をしてくれていたので、直線では大丈夫だなと思いました。羽田盃の負けを何とか巻き返そうとここまで一生懸命調整してきました。その結果が出て本当に嬉しいですね。

 今や地方競馬のトップジョッキーとして活躍している森騎手も、これが嬉しいダービー初制覇。「ずっと目標にしてきたレースです。これでひとつハードルを越えられました」と満面の笑顔。大勢のファンに「ダービージョッキーおめでとう!」と声をかけられながら、最後まで丁寧にサインや握手に応じていた。
 見事ダービー馬の称号を手にしたヒガシウィルウィンは、この後ジャパンダートダービーJpnⅠに向かう予定だ。佐藤賢二調教師の「中央馬にも引けを取らないと思う」という言葉からも、期待を持って応援したい。

取材・文:秋田奈津子
写真:宮原政典(いちかんぽ)