dirt
2017年9月20日(水) 浦和競馬場 1400m

好スタートを決め逃げ切り勝ち
ダート短距離路線の主役を狙う

 今年行われた短距離のダートグレードレースは、ここまですべて違う馬が優勝しており、スプリント戦線は抜けた馬がいない状況。1カ月半後に迫るJBCスプリントJpnⅠを見据えるうえでも、オーバルスプリントJpnⅢは重要な一戦といえるだろう。
 このレース3連覇を狙う9歳馬レーザーバレットなどベテランが多く出走する中で、若い2頭が人気を分け合った。紅一点、3歳牝馬のリエノテソーロは、昨年の全日本2歳優駿JpnⅠの覇者で、NHKマイルカップGⅠ・2着という実績を誇る。4歳のサイタスリーレッドは、ダートに転向し好走が続く勢いのある馬だ。最終的にはどちらの単勝オッズも2.7倍。票数の差でリエノテソーロが1番人気となった。
 ゲートが開くと、3番人気のブルドッグボスが躓きスタンドがどよめいた。先手を取ったのはサイタスリーレッドで、逃げも予想されたモンドクラッセは外から2番手につけた。盛り返したブルドッグボスは3、4番手の内を追走。先行集団の後ろにリエノテソーロが控え、レーザーバレットはJRA勢の中では一番後ろの位置取りで前をうかがっていた。
 3~4コーナー、前を目がけてブルドッグボスが押し上げ、内からレーザーバレットが勢いよく進出してきたが、サイタスリーレッドは先頭で手応えが良さそう。直線入口ではレーザーバレットに迫られるシーンもあったが、もう一度突き放し、2馬身差で逃げ切り勝ちを決めた。勝ちタイムは1分25秒1(稍重)。このレースが1400メートルで行われるようになった2005年以降(2007年まではテレビ埼玉杯)、最速のタイムをマークした。そして鞍上の戸崎圭太騎手はこのレース4連覇となった。
 1番人気のリエノテソーロは5着に敗れた。「勝負どころで一杯になってしまいました。初めて古馬に混ざり、パドックからその影響が出てしまったのかもしれません」と吉田隼人騎手はコメントを残した。
 優勝したサイタスリーレッドは、重賞2戦目で嬉しい初タイトルを獲得した。今年の3月に芝からダートに転向し破竹の4連勝。その勢いで臨んだ前走のクラスターカップJpnⅢは1番人気で3着という結果だった。「前走は長距離輸送と休み明けということもあり途中で息切れしてしまいましたが、今日は良い状態で臨めました」と佐藤正雄調教師は安堵の表情だった。休み明け2戦目でしっかり結果を出し、まだまだ底が知れない4歳馬。賞金しだいではあるが、「JBCスプリントに出したい」と陣営は意気込んでいる。出走できるとなれば、混沌としているダートスプリント界において大注目の存在となるだろう。
 地方馬は、3着ブルドッグボス、4着リアライズリンクスと地元の小久保智厩舎所属馬が実力を示した。しかしクラスターカップJpnⅢから連勝を狙っていたブルドッグボスにとっては悔しい敗戦。左海誠二騎手は「躓いてしまって位置を取りにいった分、苦しい競馬になってしまいました。体重も前走よりプラス17キロで少し重かったかもしれません。コースは大井1200メートルの方が合うと思いますし次走がんばります」と振り返った。JRAから小久保厩舎に移籍し、見事に復活を遂げたブルドッグボス。条件が好転するであろう東京盃JpnⅡ、そしてJBCスプリントJpnⅠでの活躍を改めて期待したい。
戸崎圭太騎手
以前芝で乗せていただいた時もセンスがあると思っていたし、浦和コースも大丈夫だというイメージでした。スタートも上手に出てくれて二の脚が早かったですね。道中も気持ちよく走っていて直線で外から馬が見えるとまた反応したので勝てるかなと思いました。今後も重賞戦線で活躍してくれると思います。
佐藤正雄調教師
前走で余裕残しだった分、今回は絞れました。モンドクラッセが逃げると思いましたがスタートが良かったので戸崎騎手が早めに判断してくれましたね。まだ4歳ですから精神面の成長が課題です。パドックでももう少しどしっと歩いてくれるようになると完全ですね。距離は1400メートルまでだと思います。


取材・文:秋田奈津子
写真:宮原政典(いちかんぽ)