当コーナーでは、地方競馬に関するイベントや注目レース等の気になる話題を写真と共にご紹介します。

ワールドオールスタージョッキーズ

2017年8月26・27日
JRA札幌競馬場
【リポート動画】

中野省吾騎手は2日で15鞍に騎乗
初戦でハナ差2着好走も総合7位

 ワールドオールスタージョッキーズ(WASJ)として札幌競馬場での開催となって3年目、地方代表となったのは船橋の中野省吾騎手。スーパージョッキーズトライアルでは、4戦3勝、2着1回という圧倒的な成績で出場を決めたことに加え、スーパージョッキーズシリーズ時代も含め地方代表としては最年少の25歳での出場ということもあり、例年以上に多くのメディアで取り上げられるなど注目が高く、また期待も大きいものとなっていた。
 その期待の大きさの現れが、2日間での騎乗数の多さといっていいだろう。WASJのレースも含め、初日が5レース、2日目はなんと10レースもの騎乗馬を集めた。今の時代は騎乗馬を調整するエージェントの力もあるのだろうが、そもそも騎手自身の能力が認められなければ騎乗依頼もないはず。招待騎手の中では、世界ナンバーワンジョッキーという評価のJ.モレイラ騎手がWASJでの騎乗も含めて2日間で21レースに騎乗したのは当然として、中野騎手の15レースはそれに次ぐもの。3番目のK.マカヴォイ騎手が7レースだから、中野騎手への期待は相当なもの。また、2日目のメインとして行われた重賞・キーンランドカップGⅢへの騎乗があったのも、招待騎手ではモレイラ騎手と中野騎手だけだった。

初日は4位タイで折り返す

 迎えた初日、中野騎手は第1レースから騎乗があり、8番人気馬で5着とまずまずの好走。しかし続いての騎乗となった第3レースで試練が訪れた。4コーナー手前で落馬。おそらく結果を残したいというはやる気持ちがあったのだろう。狭いところに入ろうとして前の馬に接触してしまった。幸いにも人馬とも大事には至らなかったものの、「4コーナーでの御法(前の馬に接触した)について過怠金100,000円」という制裁を課されてしまった。第6レースにも騎乗したが、7番人気で10着。中野騎手はエキストラ騎乗で3戦して結果を残せないまま、WASJの第1戦(芝1200メートル)に臨むこととなった。
 それでも大舞台に強い中野騎手らしく、初戦から魅せた。“B評価”の馬ながら2番人気。中団追走から4コーナーを回るところで前の視界が開けると、ゴール前で先頭に立った。勝った!とおそらく本人も思っただろう。しかしその直後から伸びてきた福永祐一騎手が並びかけたところがゴール。わずかにとらえられ、ハナ差で2着だった。
 「(WASJを迎えるにあたって)落ち着かないし、眠れないし、緊張していました。それでも第1戦の前に3戦、騎乗することができて、悪いこと(落馬)も経験して、(第1戦のときは)プレッシャーがなくなりました。先生に言われたとおりの馬で、納得の騎乗ができました」と中野騎手。そこを通りかかった内田博幸騎手は「うまく乗ってたよ。勝ったと思った。差されたのはしょうがない。うしろから来た相手もうまく乗ったから」と、南関東の後輩を称え、元気づけていた。
 2着に敗れたとはいえ、気分を良くして迎えた第2戦(芝2000メートル)。大外14番枠からの発走で、やや縦長となった馬群の7番手を追走。4コーナー手前までは前を射程圏に入れる位置取りも、直線伸びず11着だった。
 「一番外枠だったので、早く内に入れたいという思いが強すぎて、通ったらダメな2馬幅どころを通ってしまいました。3馬幅のところが伸びていたんですが、内に入れたいという思いが強すぎた結果です。ダメだった理由はわかっているので、そう考えると(2日目に向けて)希望はあります」
 初日終えて中野騎手の21ポイントは、トップの戸崎圭太騎手から17ポイント差で4位タイという成績。その初日を振り返って中野騎手は、「皆さんの声援が、プレッシャーにもなったし、後押しにもなりました。第1戦でいい成績を残せて、2戦目はうまくいかなかったんですが、まあまあのところで折り返して、表彰台の一番高いところに上がりたいと思っています」と2日目の期待を語った。

馬の力を発揮しきれなかった無念

 2日目も、WASJを迎える前に試練があった。第5レースの2歳新馬戦で、本馬場入場の際に放馬。ほかの馬が立ち上がったときに接触したとのこと。幸いすぐに馬はつかまり、無事に出走となった。勝った馬は直線で突き放す圧倒的な強さを見せたが、中野騎手のトリプルキセキは5番人気ながら2着争いを制した。
 WASJ第3戦はダート1700メートル戦で、中野騎手の騎乗馬は“A評価”。3番枠から好スタートを切ったものの、一旦後方まで位置取りを下げて外に持ち出し、向正面から徐々に位置取りを上げていった。しかし4コーナーで中団あたりにつけたところまで、直線では伸びが見られず10着だった。
 キーンランドカップGⅢは、中野騎手にこの日だけで3頭の騎乗馬を用意した森秀行厩舎のネロに騎乗。単勝16.8倍の10番人気だが、11番人気までが単勝10倍台と完全に人気が割れ、どの馬が勝ってもおかしくないメンバーではあった。5番手あたりを追走し、直線を向いて3番手、さあここからという場面もあったが、ゴール前では伸びを欠いて8着だった。
 そして迎えたWASJの最終戦は、芝1800メートル戦。中野騎手が騎乗したマイネルユニブランは“D評価”の11番人気ながら、他馬と併走する形で果敢に先行すると、4コーナーでも先頭で抜群の手ごたえ。さすがにそこから突き抜けるということはなかったが、それでも5着に粘って見せた。
 総合優勝は、最終戦をハナ差で制し47ポイントとしたカナダのE.ダシルヴァ騎手。戸崎騎手と福永騎手が45ポイントで2位タイという僅差の決着で、中野騎手は32ポイントで7位だった。
 中野騎手に2日間を振り返ってもらった。
 「第3戦は、下げて外に出すという指示で、そのとおり乗れたんですが、前走勝ったときとは馬の状態も相手も違うので、臨機応変に対応すべきだったと思います。自分が実行することなので、柔軟さが足りなかった。それでも最終戦は柔軟に乗れた感じはあって、馬の力を出すことはできたと思います。全体的には、優勝も狙える馬に乗せてもらっていたので、すごく悔しいです。それだけに、2戦目、3戦目は積極さを欠いて、柔軟に対応できなかったのが残念でした。一生懸命走ってくれた馬もいたのですが、南関東で乗っているようには、馬の力を発揮させてあげることができなかったと思います。今回のことがあって、何か考えが変わると思うんですが、どう変わるかは今の段階ではわかりません。(応援してくれた人たちには)ごめんなさいという言葉しか出てきません。今までも言い続けてきたことですが、これからも見ていてほしいです。見てくれているだけでいいので、よろしくお願いします」



取材・文:斎藤修
写真:早川範雄(いちかんぽ)