各地で行われる2歳馬による重賞競走のレースハイライトをピックアップしてお届け。

第16回 サンライズカップ

10/6(木) 門別 1700m  ヒガシウィルウィン

大接戦となった北海道2歳優駿の前哨戦「サンライズカップ」。
サウスヴィグラス産駒のヒガシウィルウィンがハナ差で制す!

 今年で第16回を迎えた門別競馬場が舞台の2歳重賞「サンライズカップ」。約1ヶ月後の2歳ダートグレード・北海道2歳優駿(JpnⅢ)のトライアルレースに位置づけられ、1着馬と2着馬には同レースへの優先出走権が付与される。このレースが創設された2001年以降、ホッカイドウ競馬の所属馬が北海道2歳優駿を9回制しているが、うち4頭の優勝馬がサンライズカップをステップとして臨んだ馬(2004年・モエレアドミラル、2006年・トップサバトン、2009年・ビッグバン、2013年・ハッピースプリント)。地元代表として中央馬を迎え撃つ大将格が、このレースの結果で決まると言っても過言ではないだろう。

 今年、その最重要トライアルレースにエントリーしてきたのは12頭。重賞2勝馬も含まれる中、最終的に1番人気の支持を受けたのは6戦2勝のヒガシウィルウィン(牡、北海道・角川秀樹厩舎、父サウスヴィグラス)だった。デビューから1度も連を外したことがなく、栄冠賞はバンドオンザランからコンマ1秒差2着、ブリーダーズゴールドジュニアカップもストーンリバーからコンマ1秒差2着。惜しいところでタイトルを逃してきたが、最後の直線で確実に追い込んでくる末脚は魅力的で、前走で今回と同じ距離(1700m)も克服。また前夜、ブリーダーズゴールドジュニアカップで死闘を演じたストーンリバーが南関東の重賞・鎌倉記念を制したこともあと押ししたのだろう。単勝1.9倍の圧倒的人気となった。

 2番人気(3.4倍)に甘んじたのが、すでに重賞を2勝しているバンドオンザラン(牡、北海道・角川秀樹厩舎、父スズカコーズウェイ)。実績では他を圧するが、栄冠賞、イノセントカップを含むここまで挙げた3勝はすべて距離1200m戦。また前走のイノセントカップで引っ掛かって逃げる展開となってしまったことも、一気に距離が伸びるこのレースでは不安要素となってしまったようだ。

 少し離れた3番人気(8.0倍)に、こちらもブリーダーズゴールドジュニアカップで差のない3着しているミルグラシアス(牡、北海道・堂山芳則厩舎、父クロフネ)。前走は盛岡のジュニアグランプリ(芝1600m)に遠征して1番人気に推されながら7着と惨敗したが、地元のダート戦に限れば安定感抜群。2戦目に1700mの距離を経験していることもアドバンテージとなりそうだ。

 4番人気(10.3倍)スウィフトハート(牡、北海道・林和弘厩舎、父スウィフトカレント)以下はふた桁台のオッズ。単勝100倍を越える馬も3頭含まれ、戦前の注目はブリーダーズゴールドジュニアカップでストーンリバーに迫った2頭と、実績馬バンドオンザランの距離克服に絞られているようだった。

 スタンド前に組まれたゲートが開いて、バラバラっとしたスタート。6枠7番から出たスーパーステション(牡、北海道・角川秀樹厩舎、父カネヒキリ)が押してハナを奪い、7枠9番から好スタートを切ったバンドオンザランが2番手につける。内枠のヒガシウィルウィンもスタートは良かったが、宮崎光行騎手が手綱をおさえて中団まで下げた。スーパーステションが後続を2~3馬身離して逃げ、あとは固まったまま4コーナーへ。直線入り口では早くもバンドオンザランが先頭に立ち、そのまま押し切りを図ったが、さすがは距離1700m戦。イノセントカップの時のようにスピードだけで他を置き去りにするような展開にはならず、内から外から後続が迫ってきた。まず内からバンドオンザランを捕えたのが、中団の内でじっと脚を溜めていたヒガシウィルウィン。いつものように弾ける脚で、一気に先頭へ躍り出る。これに外から迫ってきたのが、少し出遅れぎみのスタートから中団に位置していたスウィフトハート。井上俊彦騎手のムチに応えて一完歩ずつヒガシウィルウィンとの差を詰め、ゴールではまったく馬体をあわせて入線したように見えた。写真判定の結果、ハナ差だけヒガシウィルウィンが残しており、3着には外から追い込んだリコーソッピース(牡、北海道・川島洋人厩舎、父ゴールドアリュール)が入線。直線で脚をなくしたバンドオンザランは5着に沈んだ。

 優勝したヒガシウィルウィンは、昨年の北海道2歳優駿を制したタイニーダンサーと同じグランド牧場生産、角川秀樹厩舎所属のサウスヴィグラス産駒。ホッカイドウ競馬が誇る最強ブランドホースが、大一番を前に満を持して主役へ名乗りを挙げてきた形だ。

 管理する角川秀樹調教師は第3回(フジエスミリオーネ)、第9回(ビッグバン)につづく同レース3勝目。鞍上の宮崎光行騎手は第1回(ウィンメッセージ)、第2回(オーゴンプリンス)、第5回(カネマサドゥイット)、第8回(チョットゴメンナ)、第10回(エルヘイロー)、第13回(ハッピースプリント)につづく同レース7勝目と抜群の相性を示した。

 奇しくもブリーダーズゴールドジュニアカップの1、2着馬が、南関東と北海道で2夜連続重賞制覇。どうやら今年の北海道2歳優駿は、この2頭が両エースとなって中央馬を迎え撃つこととなりそうだ。

宮崎光行騎手
内枠スタートですし、馬場も軽いので、位置取りはこだわらずに展開を見ながら決めようと思っていました。前走で距離も経験していましたし、馬を信頼して乗りました。ゴール前まで接戦だったので頑張って追いましたが、勝ててよかったです。今後も応援よろしくお願いします。
角川秀樹調教師
展開に左右されない馬ですし、どんな競馬になっても大丈夫だと思って安心して見ていました。3コーナーで少し窮屈になるところもありましたが、利口な馬ですし、ジョッキーも馬を信頼してうまく乗ってくれたと思います。次の北海道2歳優駿が本番だと思っていますので、今回以上の出来に仕上げて臨みたいです。

文:浜近英史(うまレター)
写真:小久保巌義