各地で行われる2歳馬による重賞競走のレースハイライトをピックアップしてお届け。

第16回 フローラルカップ

9/21(水) 門別 1600m  オーブスプリング

数々の名牝が制してきた2歳牝馬重賞「フローラルカップ」を
新種牡馬ディープブリランテ産駒のオーブスプリングが快勝!

 今年で16回目となる2歳牝馬の重賞「フローラルカップ(門別1600m)」。近10年の優勝馬を近いところから挙げていくと、タイニーダンサー、ステファニーラン、ノットオーソリティ、カイカヨソウ、エミーズパラダイス、クラーベセクレタ、オノユウ、ネフェルメモリー、カミヒコーキ、フェアリーライドと錚々たる顔ぶれが名を連ね、多くの馬が1ヶ月後の「エーデルワイス賞(JpnⅢ)」へと駒を進めている。まさしくダートグレードへ向けた前哨戦、また来年の南関東牝馬クラシックを占う意味で大切な位置づけのレースと言っても過言ではないだろう。

 今年、その重要な一戦にエントリーしてきた馬は7頭。少頭数だが、夏にJRA北海道シーリズへ挑戦した素質馬も複数含まれ、実力拮抗の楽しみなメンバーが揃った。

 上位人気が接近する中、1番人気となったのは桑村真明騎手鞍上の1枠1番オーブスプリング(牝、角川秀樹厩舎、父ディープブリランテ)。綺羅星のごとく有力2歳馬がひしめく角川厩舎の中にあっても、早い時期から期待の大きかった馬だ。前走の「リリーカップ(1200m)」は3番人気に推されながら6着に敗れたが、このメンバーでは唯一の重賞経験馬となり、満を持しての本格化を期待されて単勝2.9倍の支持を集めた。

 2番人気(3.8倍)でつづいたのは石川倭騎手鞍上の2枠2番ジュンアイノキミ(牝、米川昇厩舎、父セイントアレックス)。ここまで6戦1勝という戦績だが、3着4回、4着1回と、どんな相手のレースでも大崩れしない魅力がある。

 3番人気(4.7倍)は阿部龍騎手鞍上の6枠6番ベッティング(牝、角川秀樹厩舎、父カジノドライヴ)。7月の「ターフチャレンジ1(1700m)」に勝利してJRA北海道シリーズへの権利をつかみ、「コスモス賞(札幌・芝1800m)」「すずらん賞(札幌・芝1200m)」へ果敢に挑戦。5着、7着と芝では結果が出なかったものの、ダート戦での巻き返しを狙ってきた。

 4番人気(5.5倍)は宮崎光行騎手鞍上の5枠5番ストレンジウーマン(牝、角川秀樹厩舎、父サウスヴィグラス)。まだ2戦1勝とキャリアは浅いが、昨年のタイニーダンサーやモダンウーマンと同じ、グランド牧場生産所有のサウスヴィグラス産駒だ。

 そして5番人気(6.0倍)は黒澤愛斗騎手鞍上の4枠4番チェリースプリング(牝、石本孝博厩舎、父チェリークラウン)。3戦1勝、2着2回とデビューから連を外したことがなく、敗れた2戦はいずれも僅差。まだ底を見せておらず、前走ではストレンジウーマンに先着している。

 以上の5頭が単勝ひと桁代で人気を分け合う中、前年から内回り1600mへコース変更された一戦は、混戦必至のムードに包まれてゲートが切られた。好スタートを決め、すんなりとハナを奪ったのはストレンジウーマン。大外スタートのオルディル(牝、田中淳司厩舎、父サウスヴィグラス)がこれを追いかけ、2頭が後続を引き離して逃げる形となった。離れた3番手にオーブスプリングとベッティングが並び、チェリースプリングとジュンアイノキミも差がなくつづく。ブラックプール(牝、川島洋人厩舎、父パイロ)1頭が大きく離された最後方という隊列のまま4コーナーへ。ここで馬群が縮まり、逃げていたストレンジウーマンの脚がいっぱいになってオルディルが先頭に。外からオーブスプリングとチェリースプリングも先頭を捕え、3頭並んで最後の直線へと入った。この争いから真っ先にオルディルが脱落し、オーブスプリングが先頭に躍り出る。コーナーワークを利してジュンアイノキミも内から脚を伸ばしたが、先頭までは届かず2馬身半差の2着まで。オーブスプリングが1番人気に応え、重賞初勝利を飾った。

 オーブスプリングは新種牡馬ディープブリランテの産駒で、これが中央地方含めて父ディープブリランテの記念すべき初重賞勝利。鞍上の桑村真明騎手、管理する角川秀樹調教師ともに昨年のタイニーダンサーにつづくフローラルカップ連覇となり、同コンビは前週のイノセントカップ(バンドオンザラン)から2歳重賞を2連勝という記録も達成した。

 代々つづくホッカイドウ競馬の強い2歳牝馬の中にあっても、その代表格となる馬たちが制してきたフローラルカップ。輝かしい未来へ向け、オーブスプリングが堂々とそのスタートラインに立った。

桑村真明騎手
内枠スタートだったので、前が詰まらないようにだけ気を付けて乗りましたが、3~4コーナーの手応えは抜群でした。もともと能力のある馬なのですが、なかなか結果が出せずにいたので、重賞で強いところを見せられて良かったです。まだまだ強くなると思いますので、応援してください。
角川秀樹調教師
これまでは詰めの甘いレースがつづいたのですが、今日はよく頑張ってくれましたね。まだ抜け出してから伸びきれない歯がゆい面も残っていますが、その辺はこれからクリアしていってくれるでしょう。このあとはエーデルワイス賞に行くか、川崎のローレル賞に遠征するか、まだ迷っています。

文:浜近英史(うまレター)
写真:小久保巌義