各地で行われる2歳馬による重賞競走のレースハイライトをピックアップしてお届け。

第41回 栄冠賞

6/30(木) 門別 1200m  バンドオンザラン

2014年生まれのサラブレッドで1番最初の重賞馬は、
スズカコーズウェイ初年度産駒バンドオンザラン!

 日本一早く行われる2歳重賞であることはもちろん、秋から始まる2歳ダートグレード戦線や、来年の南関東クラシック戦線へ向けても重要な一戦となることがファンの間でも定着化してきた「栄冠賞(門別1200m)」。昨年の優勝馬タイニーダンサーは、のちに「エーデルワイス賞(JpnⅢ・門別)」「北海道2歳優駿(JpnⅢ・門別)」を連勝し、当年のNARグランプリ『2歳最優秀牝馬』を獲得。その後JRAへ移籍し、先日の「関東オークス(JpnⅡ・川崎)」に優勝してダートグレード競走3勝目を挙げる活躍を見せている。また昨年2着のモダンウーマンは、遠征で臨んだ「ローレル賞(川崎)」を快勝したのちに南関東へ移籍し、その初戦となった「東京2歳優駿牝馬(大井)」を制覇。3歳シーズンも「ユングフラウ賞(浦和)」をステップに「桜花賞(浦和)」を制し、見事に南関東牝馬クラシックホースとなっている。

 将来の活躍が約束されると言っても過言ではない「栄冠賞」のタイトルを獲りにきた今年の出走馬は13頭。比較的成長の早い牝馬が半数以上(8頭)を占めるのは例年通りだが、特筆すべきは出走各馬の所属先。田中淳司厩舎の所属馬が7頭、角川秀樹厩舎の所属馬が5頭も出走し、2厩舎以外の出走馬は1頭だけというメンバー構成。中央競馬における社台グループ一極集中の構図ではないが、ある意味ではホッカイドウ競馬の現状を象徴するような現象と捉えることもできる。

 フレッシュチャレンジ競走を勝ち上がったばかりの馬が5頭もいる初々しい顔ぶれの中で、人気は6月9日に行われた「JRA認定 ウィナーズチャレンジ1(門別1200m)」の上位馬に集中。同レースの2着馬で、今季の門別開幕日に組まれた「JRA認定 スーパーフレッシュチャレンジ(門別1200m)」に優勝して2014年生まれ最初の勝ち上がり馬となったバンドオンザラン(牡、角川秀樹厩舎、父スズカコーズウェイ)が1番人気(2.5倍)に支持された。前走、そのバンドオンザランを破ったピンクドッグウッド(牝、田中淳司厩舎、父サウスヴィグラス)が僅差でつづき2番人気(3.4倍)。以下、前走の「アタックチャレンジ(門別1200m)」を8馬身差で圧勝したヒガシウィルウィン(牡、角川秀樹厩舎、父サウスヴィグラス)が3番人気(6.4倍)で、ここがデビュー2戦目となるスーパーステション(牡、角川秀樹厩舎、父カネヒキリ)が4番人気(9.1倍)。そして、前走でピンクドッグウッド、バンドオンザランに次ぐ3着だったアップトゥユー(牝、角川秀樹厩舎、父サウスヴィグラス)が5番人気(10.8倍)でつづいたが、ここまでの上位人気馬5頭は揃って昨年の栄冠賞1・2着馬(タイニーダンサー、モダンウーマン)と同じグランド牧場の生産馬。これも、近年のホッカイドウ競馬2歳戦を象徴している現象と言えるだろう。

 ゲートが開いて、タイセイプロスパー(牡、田中淳司厩舎、父プリサイスエンド)のダッシュが少しつかなかった以外は横一戦のスタート。先行争いも、エイシンスカラベ(牡、田中淳司厩舎、父エイシンアポロン)、ラブミーファルコン(牝、角川秀樹厩舎、父スマートファルコン)、ピンクドッグウッド、アップトゥユー、サマーダイアリー(牝、田中淳司厩舎、父ケイムホーム)らがハナを譲らず、常に4~5頭が横一戦に並ぶ展開に。バンドオンザランは先行集団の直後につけ、絶好の手応えで追走する。その隊列を保ったまま4コーナーへ差し掛かると、直線入り口でピンクドッグウッドとアップトゥユーが先に抜け出しを図った。その2頭の叩き合いを横目に見ながら、馬場の真ん中を通って力強く脚を伸ばしたのがバンドオンザラン。馬群を縫うように内から伸びてきた2着ヒガシウィルウィン、直線半ばで外へ持ち出した3着スーパーステションの追撃を振り切り、2014年生まれのサラブレッドとして1番最初の重賞タイトルを見事に獲得した。

 優勝したバンドオンザランはグランド牧場の生産所有馬で、今年の2歳世代が初年度となる新種牡馬スズカコーズウェイの産駒。角川秀樹調教師は、2001年アサティスダイオー、2004年アブソルートダンス、2009年オノユウ、2015年タイニーダンサーに次ぐ5度目の栄冠賞勝利。桑村真明騎手も、2009年オノユウ、2015年タイニーダンサーにつづく栄冠賞3勝目となった。

 馬主、調教師、生産者、騎手ともに、昨年のタイニーダンサーとまったく同じ顔ぶれ。また、1~3着はグランド牧場生産の角川秀樹厩舎所属馬が独占する結果となった今年の栄冠賞。優勝したバンドオンザランはもちろん、その他の栄冠賞出走組からも未来のスターホースが誕生してきそうな予感をさせるほど、素質馬がずらりと揃った見応えある日本一早い2歳重賞だった。
桑村真明騎手
道中はいつでも動けるような手応えでしたし、4コーナーで前が開いた時には勝てると思いました。非常に乗りやすい馬で、追ってからの反応も抜群でした。距離は延びても大丈夫だと思いますし、スズカコーズウェイの産駒なので芝も問題なく対応してくれると思います。応援してください。
角川秀樹調教師
どんなレースにも対応できる馬なので、安心して見ていられました。前走は瞬発力勝負で負けたような感じもありましたが、今日は時計のかかる馬場だったことも、この馬には味方したのだと思います。芝は走ってみないと分かりませんが、このあとは函館2歳ステークスへ向かう予定です。

文:浜近英史(うまレター)
写真:小久保巌義