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2016年12月28日(水) 園田競馬場 1400m

園田コースで本領発揮
来春への夢が広がる勝利

 兵庫にはダートグレードレースが3つあるが、第1回から今に至るまでJRA所属馬しか勝ったことがないのが、この兵庫ゴールドトロフィーJpnⅢ。2007年(第7回)からはハンデ戦になったが、2014年に浦和のジョーメテオが2着、3着に高知のサクラシャイニー、4着に兵庫のタガノジンガロが入ったのが、地方勢としての最高のパフォーマンスとなっている。
 今年もJRAから4頭が参戦してきたが、その4頭はいずれもダートグレードレースの覇者。しかしそこはハンデ戦ということで、岩手のラブバレットが単勝16.5倍、北海道のオヤコダカが26.4倍と支持を集めた。
 とはいえ人気はJRA所属馬が上。なかでも今年だけで重賞を3勝しているノボバカラと、兵庫ジュニアグランプリJpnⅡを制した実績があるニシケンモノノフに集中し、この2頭の馬連複は1.7倍という数字になっていた。
 笠松グランプリから臨んだラブバレットとオヤコダカは、なんとかそこに食い込みたいところ。だが前日までに降った雨は大量で、馬場は朝から不良のまま。さらにレース前日に馬場の内側全体に砂が補充されたというコンディションは、インコースが不利という状況に見えた。
 北風が西風に変わった発走時刻。オヤコダカがなかなかゲートに入らなかったが、そこで平常心を失う馬はおらず、全馬一斉のスタート。まず先手を主張したのは、地元のランドクイーンだった。
 しかし今回の相手はかなり強力。向正面の半ば過ぎで早くもノボバカラが先頭に立ち、ニシケンモノノフもその内から並んでいった。そして中団から岩田康誠騎手のドリームバレンチノが追撃開始。好位を追走していたグレープブランデーは失速したが、ラブバレットとオヤコダカは前を目指して追い続けた。
 その流れはノボバカラにとって目標にされる展開。ニシケンモノノフ鞍上の横山典弘騎手はそのターゲットを的確に捉えて4コーナーで先頭に。最後の直線でドリームバレンチノが猛追してきたが、ゴール地点ではクビ差だけしのいでの勝利となった。
 「岩田に負けるわけにはいかないからね」という横山騎手のコメントは、本心か冗談かは定かではない。しかし重賞で惜敗続きだったこの馬が、コーナー4つのこの舞台で勝利をものにしたのは、鞍上の手腕によるところも大きかったに違いない。
 ドリームバレンチノはこのレースで2年連続の2着。「59.5キロがなあ……」と加用正調教師は悔しがったが、それでも9歳でこの走りならまだまだ活躍が見込めそうだ。ノボバカラは懸命に粘って3着。ラブバレットはそこから1/2馬身差の4着だった。
 「最内枠でもきれいに立ち回れて、こういうレースができたことはよかったと思います」と山本聡哉騎手。しかしかきつばた記念JpnⅢで6着に敗れたときに「外枠が欲しかった」と話していただけに、本音としてはやはり悔しいところがあるだろう。それでも今回の内容には納得できる手応えがあったようだ。
 ラブバレットとはクビ差で5着に入ったオヤコダカも同様。「この距離にも対応してくれていますから、まだ上積みが見込めると思います」と話した石川倭騎手もまた、今後への期待を感じていたようだった。
横山典弘騎手
(休み明けの)前走より具合がよくなっていると聞いていましたので、自信をもって乗りました。馬場も悪かったですし、積極的に行けたら行こうと考えていましたが、そのとおりのレースができました。ノボバカラがちょうどいい目標になってくれましたね。まだ若い馬、これからも活躍できると思います。
庄野靖志調教師
引退された領家先生からいい馬を引き継がせていただきましたが、園田の馬場も合っていると思っていましたし、なんとかひとつ重賞を勝ててよかったです。このあとは根岸ステークス、フェブラリーステークスの予定にしますが、このオーナー(高知在住)の馬ですから、黒船賞も大きな目標になります。


取材・文:浅野靖典
写真:桂伸也(いちかんぽ)