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2016年12月14日(水) 川崎競馬場 1600m

好位追走から直線で突き放す
芝・ダート4連勝でJpnⅠ制覇

 朝方の雨の影響で、1レースから不良馬場で行われていた川崎競馬場。結局、夜になっても馬場コンディションは変わらず、初冬らしい寒さの中、川崎競馬今年最後のビッグレース、全日本2歳優駿JpnⅠを迎えた。
 今年は、北海道から大挙6頭が参戦。兵庫ジュニアグランプリJpnⅡを制したローズジュレップや同3着のバリスコア、北海道2歳優駿JpnⅢの2~4着馬など、ダートグレードレースで上位に入った馬たちが名を連ねており、北海道勢対JRA勢の構図となっていた。しかし、混戦模様の牡馬たちをよそに、単勝2.0倍の1番人気に支持されたのは、エーデルワイス賞JpnⅢの勝ち馬、紅一点のリエノテソーロだった。
 ゲートが開き、先手を取ったのはローズジュレップ。大外枠からシゲルコングが勢いよく前に迫り2番手につけた。外の3番手に初ダートのメイソンジュニアが追走し、リエノテソーロは好位の内でレースを進めた。逃げも予想されたネコワールドは、中団から向正面で失速してしまった。
 3コーナーで外に持ち出したリエノテソーロは、抜群の手応えで前の2頭に並びかけ、直線半ばで先頭に立つと、そのまま突き放して余裕のゴールイン。2着のシゲルコングに3馬身差をつける快勝となった。
 「1コーナーに入る時、砂をかぶってどうなるか心配していましたが、大丈夫だったので勝てるだろうと思いました」という吉田隼人騎手や、「直線は、もっと離せ~!と思っていました」という武井亮調教師の表情から、陣営にはかなりの自信があったことが伺えた。ここでは力が一枚抜けていると思わせるような素晴らしい勝ちっぷりだった。
 これでデビューから4戦4勝となったリエノテソーロ。デビューからの2戦は中央の芝1200メートルで連勝し、3戦目の前走は初ダートのエーデルワイス賞JpnⅢで重賞初勝利。そしてあっという間にJpnⅠ制覇となった。ここは通過点と言わんばかりの未知の可能性を秘めており、これからどんな競走馬に成長していくのか楽しみでならない。
 「高いレベルで色んな選択肢が考えられる」と陣営が言うように、気になるのは今後の路線だ。武井調教師は「春の目標は、桜花賞かドバイ遠征になるでしょう」とコメント。さらに「どちらでもいい勝負になると思います」と頼もしい言葉を付け加えた。次走については、その目標を決めてから考えていくとのこと。2歳ダートチャンピオンが、年が明けてどのような道を歩むことになるのか大注目だ。
 そして地方勢では、3着にローズジュレップ、4着にヒガシウィルウィンが入り、やはり北海道勢が健闘した。特にローズジュレップは最後まで2着馬に食い下がり、4着馬には4馬身差をつけたことから、能力の高さを示したといっていいだろう。兵庫ジュニアグランプリJpnⅡから引き続き手綱を任された川原正一騎手は「スタートとまわりの出方しだいで、ハナでも2番手でもいいと考えていました。マイペースで行けたし能力は出せたと思います。今は1600メートルくらいが良いですが、成長次第では2000メートルくらいでも大丈夫なのではないでしょうか。このメンバー相手で3着ですから将来が楽しみです。チャンスがあればまた乗りたいです」と語った。今年の地方2歳戦線では唯一のグレード(JpnⅡ)勝ち、そして今回の結果からも、NARグランプリ2歳最優秀牡馬の受賞はほぼ確実といえよう。来年の3歳戦線や全国区での活躍を期待したい。
吉田隼人騎手
テンションが上がりやすい馬ですが今日はパドックも返し馬も落ち着いていました。馬のうしろでいつでも動ける手応えで、追ってからの反応も良く思い通りの脚を使ってくれました。とても賢くて、一息で走らないですし、乗り手に従順で操縦性がとても良い馬。まだ底が見えてないですから本当に楽しみです。
武井亮調教師
去年のアメリカのセールで買った馬ですが、まだ実績のない僕に預けて頂き結果を出せて嬉しいです。能力は抜けていると思っていて距離だけが心配でしたが、返し馬の落ち着いた様子を見て大丈夫だと思いました。自在性があってスピードを持続したままコントロールでき理想的な競馬ができる馬です。

3着に入ったローズジュレップ(北海道)

取材・文:秋田奈津子
写真:築田純(いちかんぽ)、NAR