2016年11月10日(木) 門別競馬場 2000m

得意の舞台で直線差し切る
人気の連勝馬を牝馬が一蹴

 ホッカイドウ競馬のフィナーレを飾る古馬重賞、道営記念。天候も良く、昨年のような吹雪とはならずほっとしたが、マイナス2度前後のキンと冷えた空気が冷たい。連日寒い日が続いたにもかかわらず、出走馬15頭はパドックでぴかぴかに馬体を輝かせていた。道営競馬関係者が目標とするレースだけあって、各陣営の最高の仕上げに、見ている方も気が引き締まる。
 古馬重賞4連勝と充実著しいオヤコダカが単勝1.9倍の1番人気。2番人気は今年の3歳二冠馬スティールキングで、ノースクイーンカップの勝ち馬タイムビヨンドが続いた。2日前の雨の影響で馬場状態は重。
 第11レースの2歳牝馬重賞・ブロッサムカップに続き、静内高校吹奏楽部の演奏によるファンファーレで道営記念がスタートした。
 4コーナーポケットからの発走。横並びの中からダイワエクシードが先手を取る。ロイヤルクレストが続き、オヤコダカは3番手。その後ろにジュエルクイーンがぴったりつける。ウルトラカイザーとタイムビヨンド、スティールキングが中団を追走した。
 向正面から先頭に立ったロイヤルクレストを、4コーナー手前でオヤコダカが楽な手応えで捕まえ先頭に立つ。後方からはタイムビヨンド・五十嵐冬樹騎手と、ジュエルクイーン・吉原寛人騎手の牝馬2頭が、激しい追い込みで、直線捕らえにかかった。そして鞍上のムチに応えたタイムビヨンドが残り100メートルで差し切り、優勝した。
 勝ちタイムは2分8秒2。2着はオヤコダカ、3着ジュエルクイーンと上位を4歳馬が占めた。高知の別府真衣騎手は昨年の3着に続き、今年はソルモンターレに騎乗して5着と人気薄を上位に持ってきた。五十嵐騎手は2008年コンテ以来の道営記念3勝目、堂山芳則調教師は道営記念最多勝記録を更新する6勝目となった。
 検量室前に引き上げてきた五十嵐騎手は、調教スタンドの堂山調教師に向かってガッツポーズ。「1頭強い馬(オヤコダカ)がいたが、2000メートルなら」と、2人が自信を持っていたのがタイムビヨンドの中距離での強さ。ハードな調教にも耐え、上り3ハロンはメンバー中最速の40.5秒と、牡馬相手に門別の深いタフな馬場をこなした。副賞のスクリーンヒーローの次年度交配権を得た生産者、船越牧場・船越三弘さんは「母馬は(生産馬の)コンサートボーイの妹です。今年は全妹が生まれました」とゆかりの血統の活躍を喜んでいた。
 この日は多くのファンが集まって1年の思い出を語り合う。全レース終了後は恒例の騎手との交流会が行われ、写真撮影や握手に応じていた。ホッカイドウ競馬は今年度、霧や台風による競走の取り止めも10レースにとどまり、発売金額は18年ぶりに200億円を超えた。売上げは前年度対比20.4パーセント増。ネット発売を中心に売り上げは増加しているが、ホッカイドウ競馬はファンとの距離の近さも魅力のひとつだ。
 最後に、連覇を目指していたグランプリブラッドが、道営記念に向けた追い切り中に故障を発症したのは残念だった。名馬の冥福を祈りたい。
五十嵐冬樹騎手
2000メートルは向く馬なので、一発狙っていました。ゴール前は、早くゴール板が来てほしい、しのいでくれたらと思って乗っていました。馬とスタッフに助けられました。感謝しています。
堂山芳則調教師
嬉しいですね。2000なら脈はあると思っていました。牡馬との争いでしたが、よく走ってくれました。良いところは勝負強さ。普段はおとなしいのですが、男まさりです。次走は船橋のクイーン賞を予定しています。


取材・文:小久保友香
写真:中地広大(いちかんぽ)