ダービーウイーク タイトル

 競走馬にとって最高の名誉、それはダービー馬の称号。

 全国各地の6競馬場(佐賀・盛岡・門別・大井・園田・名古屋)で行われる“ダービー”6競走を短期集中施行する夢のような6日間、それが「ダービーウイーク(Derby Week)」(創設2006年)です。

 ダービーウイーク各レースで勝利を掴んだ各地の世代ナンバーワンホースは、全国3歳馬のダート頂上決戦「ジャパンダートダービーJpnⅠ(大井・7/8)」出走に向け、大きなアドバンテージが与えられます(※)。
※ 東京ダービーの1・2着馬にはジャパンダートダービー(JDD)への優先出走権が与えられ、その他5競走は指定競走(注)として認定されている。
(注) 指定競走とは、その1着馬が根幹競走の選定委員会において、同一地区内の他の馬に優先して選定される競走をいう。なお、他の優先出走権の状況や指定馬の数によって適用されない場合がある。
 前年春から、新馬戦を皮切りにスタートし、秋の「未来優駿」シリーズを経て、一世代でしのぎを削る熱き戦いは、集大成への大きな山場を迎え、興奮はクライマックスへ。

栄光の物語が走り出す!ダービーウイークをお見逃しなく!

2015年ダービーウイークの総括はこちらです
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直線早めに抜け出して粘り切る
波乱の決着は小久保厩舎ワンツー

 今年の南関東3歳戦線、特に牡馬の路線は混沌としていた。一冠目の羽田盃は人気2頭での決着とはいえ、勝ったストゥディウムは前哨戦の京浜盃で惨敗があった。その京浜盃を8馬身差で圧勝し、羽田盃では2着だったオウマタイムは、抑えきれずに3コーナーで早めに先頭に立ってしまうレースぶりや気性難が言われていた。そして迎えた東京ダービーは、羽田盃1、2着馬が人気の中心にはなったものの、牝馬路線から浦和・桜花賞を制したララベル、東京プリンセス賞を勝ったティーズアライズの参戦もあって予想を難しいものにしていた。
 結果、人気2頭ともに掲示板に載ることができず、勝ったのは単勝9番人気のラッキープリンス。2着に6番人気パーティメーカー、3着に10番人気ヴェスヴィオという波乱の決着。クローズアップされたのは、むしろ“人”だった。昨年まで3年連続100勝以上という南関東では断然の成績を残している小久保智調教師が管理馬3頭を出走させての東京ダービー初制覇は、ワンツーでの決着。また浦和所属馬による東京ダービー勝利は、1990年のアウトランセイコー以来25年ぶりのこと。そして、なぜか東京ダービーのタイトルにだけは手が届かないことで注目される的場文男騎手は、またしてもの2着9度目だった。
 逃げたのは最内枠のドライヴシャフト。トライアルの東京湾カップでは、手綱をとった的場騎手が最高齢重賞勝利記録を更新したが、今回の鞍上は内田博幸騎手。ぴたりと2番手を追走したオウマタイムは、京浜盃や羽田盃のときよりも早いタイミング、残り1000メートルのあたりで単独先頭へ。そして後続勢が迫るのも今回は早かった。離れた3番手集団から、ティーズアライズ、ウインバローラス、ラッキープリンスが4コーナーで並びかけて4頭が横一線。その中から直線半ばで抜け出したのがラッキープリンスだった。
 4コーナーではまだ差のある7番手だったパーティメーカー、さらにその後ろからヴェスヴィオが外から迫ったが、ラッキープリンスがこれらを振り切っての勝利。的場騎手のパーティメーカーは3/4馬身及ばず、ヴェスヴィオが半馬身差で3着。距離延長の不安もあったオウマタイムは6着、二冠を狙ったストゥディウムは持ち味の末脚不発で7着だった。
 「1頭になると遊ぶところがあるので、早く先頭に立ち過ぎました。でも馬が最後までがんばってくれました」というラッキープリンスの今野忠成騎手は、ジャパンダートダービーJpnⅠはフリオーソで制したことがあるものの、東京ダービーは初制覇となった。
 惜しくも2着だった的場騎手は、検量室から出てくるなり、「2着9回も記録だよ」と悔しさを露わにしていた。「(東京ダービーは)人生の宿題だね」とも。
 その的場騎手には、レース前のパドックでもファンから多くの声援があったが、的場騎手に東京ダービーを勝って欲しいと強く願っていたのが、じつは小久保調教師だった。「的場さんには、ラッキープリンスに乗ってもいいですよって話したこともあったんですが、パーティメーカーに感じるところがあったんでしょう。ラッキーが先頭に立ってからも、マトバ、マトバ、って叫んでいました(笑)」。ワンツーを達成した小久保厩舎の2頭は、揃ってジャパンダートダービーJpnⅠに向かうことになるようだ。
今野忠成騎手
羽田盃で初めて乗せてもらって、勝負根性のある馬だと思っていました。今持っている馬の力を100%出せればチャンスはあるんじゃないかと思いました。(小久保)先生からは集中力を欠かさないように競馬をしてくれという指示だったので、理想の競馬ができたと思います。馬もちゃんと反応してくれました。
小久保智調教師
3頭ともいいレースをしてもらいたいと思ってレースに送り出しました。それぞれがいい位置につけて、さあここからだというときに、うまくみんな反応してくれたと思って見ていました。(ラッキープリンスは)あそこまで行けば、そんなにへこたれる馬ではないので、しのいでくれると思って見ていました。

東京ダービー9度目の2着となった
的場文男騎手

取材・文:斎藤修
写真:岡田友貴(いちかんぽ)、NAR