2015年12月15日(火) 園田競馬場
ファイティングジョッキー賞
エキサイティングジョッキー賞
チャンピオンジョッキー賞

第1戦 ファイティングジョッキー賞

第2戦 エキサイティングジョッキー賞

第3戦 チャンピオンジョッキー賞

初戦制した岩田騎手が2度めの優勝
現役最多勝の貫禄見せた的場騎手

 通算2000勝以上の騎手によって争われるゴールデンジョッキーカップの第1回が行われたのは27年前の1988年。途中、兵庫に2000勝以上の騎手が不在となったことで実施されなかった年もあり、迎えた今年が第24回。1988年といえば昭和最後の63年(64年が7日だけあったが)で、つまりこのシリーズは平成とともに歩んできたことになる。
 昼ごろには陽が差していた園田競馬場は、上着を着て歩いていると汗ばむほどで、12月中旬とは思えない陽気。とても雨が降ってくるとも思えなかったが、ピンポイント予報は正確なもので、第1戦のあたりでポツポツと来た。第2戦のパドックから本馬場入場のあたりでやや雨脚が強くなったものの、しかしその後は傘も必要のない程度の降りになり、表彰式が無事にスタンド前の賞典台で行われたのは幸いだった。
 今回のメンバーを見ると、3戦それぞれに専門紙の印が集中する馬がいいて、その馬に当たった騎手は、いわばシード権をもらったようなもの。しかし複数のレースでその人気馬に騎乗するという騎手はなく、戦前はどの騎手が有利ということもなかった。
 第1戦ファイティングジョッキー賞は、単勝1.2倍の断然人気となった岩田康誠騎手(JRA)がスタートで出遅れた。しかしすぐに挽回して5番手につけると、3~4コーナーでは外からまくりぎみに進出、直線大外から突き抜けた。
 逃げた赤岡修次騎手(高知)が粘っていたが、ゴール前でとらえた山口勲騎手(佐賀)が4馬身差2着。赤岡騎手はアタマ差3着で、上位3着まで人気順の入線となった。
 勝った岩田騎手のウエバフラッシュは、中央未勝利から転入し、前走その初戦を制していた3歳馬。レースごとに行われた表彰式のインタビューで岩田騎手は、「前走で乗っていた川原(正一)さんが、出遅れても勝てるよと言ってました」とコメントして笑いを誘った。
 第2戦エキサイティングジョッキー賞も専門紙の印は偏っていたが、単勝3倍前後で3頭が人気を分け合うというもの。結果、その3頭での決着となったのだが、勝ったのは嬉勝則騎手(高知)が手綱をとった3番人気のブレーヴブラッド。先行争いからハナを主張すると、そのまま逃げ切って見せた。嬉騎手は福山競馬廃止にともなって高知に移籍していたが、これが園田初勝利となった。
 5番手から3コーナーで勝ち馬の直後まで進出した村上忍騎手(岩手)が3馬身差の2着。1番人気の内田博幸騎手(JRA)が後方から直線猛追したものの、ハナ差とらえきれず3着だった。
 実は1コーナーで何頭かがごちゃつく場面があった。そのときに不利を受け、後方まで位置取りを下げていたのが内田博幸騎手。「1コーナーで不利があったけど、そういうことも含めて競馬だから」という潔さは、いかにも内田博幸騎手らしい。
 第2戦を終えた時点で、第1戦を制した岩田騎手が27ポイントでトップに立ち、第2戦を制した嬉騎手が1ポイント差の26ポイントで続いた。しかし両騎手とも第3戦の騎乗馬はあまり人気がなく、誰が優勝に近いかの予測もできない状況だった。
 第3戦チャンピオンジョッキー賞は、B1B2級戦にもかかわらず、全国区の注目馬が出走していた。ここまで重賞6勝、今年グランダム・ジャパン3歳シーズンの女王となったトーコーヴィーナスだ。抽選でこの馬が当たったのは内田利雄騎手(浦和)。当然のことながら断然人気で、最終的に単勝1.4倍の支持を集めた。
 そのトーコーヴィーナスが抜群のスタートを切り、単騎での逃げとなった。2周目の向正面でも2番手以下に差をつけていたため、そのまま逃げ切るかにも思えた。しかし好位から仕掛けてきた的場文男騎手(大井)のステージインパクトが4コーナーでとらえると、そのまま直線突き放しての勝利となった。
 後方から位置取りを上げてきていた向山牧騎手(笠松)が4馬身差の2着。直線失速したトーコーヴィーナスは3着。内田利雄騎手は、「2コーナーのゲートのところで物見をして、気合を入れたらハミをとったんだけど、最後は一杯になってしまいました」。トーコーヴィーナスはレース中に遊んでしまうなど難しい面もあり、名手でも初騎乗では乗りこなすのが難しかったようだ。
 総合での結果は、第3戦で後方から懸命に追い上げ5着の10ポイントを加算した岩田騎手が合計37ポイントを獲得して優勝。2位争いは大混戦で、9、5、2着の向山騎手が29ポイントで2位。10、8、1着の的場騎手と、4、4、7着の木村健騎手(兵庫)が28ポイントで並んだが、「同ポイントの場合は、3レース中で最上位着順を記録した騎手を上位」という規定から、昨年も最終戦を制して総合3位だった的場騎手が2年連続で3位となった。
 2010年以来5年ぶり、2度めの優勝となった岩田騎手は、「優勝賞金(100万円)は騎手会に全額寄付します!」と表彰式で宣言し、再び場内を沸かせた。

取材・文:斎藤修
写真:桂伸也(いちかんぽ)

総合優勝
岩田康誠騎手
(JRA)
(第1戦のウエバフラッシュは)1400メートルのほうがゆったり流れてレースがしやすいと思いますが、今回は馬の力で勝たせてもらいました。外を回しても勝てると思いました。(第3戦は)優勝を狙って一発狙いでいきました。すごくいい脚で5着を拾って、表彰台に立ててうれしいです。
総合2位
向山牧騎手
(笠松)
(第3戦は)最後にいい脚を使うと聞いていたので、真ん中あたりのいい位置につけられて、末脚にかけて最後は伸びてくれました。2着はあるんじゃないかなあと思って追っていました。ただ1つも勝ってなかったので、2着でも(総合では)ダメだと思っていたんですが、2位に入れてよかったです。
総合3位
的場文男騎手
(大井)
(第3戦は)トーコーヴィーナスが強いと思っていましたが、負かすチャンスがあれば負かしてやろうという気持ちはありました。SJTで2勝させていただいたこともあるし、園田はいい思い出がある好きな競馬場です。竹見さんの記録を抜けるかはわからないですが、とりあえず7000勝目指してがんばります。