dirt
2015年10月6日(火) 金沢競馬場 2100m

古豪2頭を相手に差し切り勝ち
今後に夢が広がる重賞初制覇

 白山大賞典JpnⅢを58キロで勝利したのは、2004年のタイムパラドックスが最後。また、このレースを9歳で制した馬は、過去に1頭も出ていない。3連覇を狙うエーシンモアオバーはそのデータが心配になるところだったが、最終的には単勝2番人気に支持された。
 その実績馬より高い支持を集めたのがソロル。当日の早い時間帯から1番人気となっていたのは、やはり“斤量”という部分が評価されたのかもしれない。
 しかし勝ったのは、ソロルよりも1キロ軽い54キロで走ったマイネルバイカ。58キロのエーシンモアオバーは2着、同じく58キロのソリタリーキングは3着だった。
 今年の白山大賞典JpnⅢも、先手を取ったのはエーシンモアオバー。スギノハルバードが追いかけていったが競るまでには至らず、1周目のホームストレッチでは後続を少し離す形での逃げとなった。
 しかし1コーナー手前で待ったをかけに行ったのが、ソロル鞍上の藤岡康太騎手。それでもエーシンモアオバーは先頭を譲らず、逆にソロルのほうが向正面で手応えが怪しくなってしまった。
 「ソロルがウチの馬をつぶしに来て、そこでペースが変わってしまいましたね」と振り返ったのは、エーシンモアオバーを管理する沖芳夫調教師。「ただ、ソロルはああしないと勝てませんからね。これは仕方ないです」と、苦笑いだった。
 鞍上の岩田康誠騎手も苦笑いで戻ってきた。そして不思議そうな顔をしながら、検量室に入っていった。
 「補欠1番手(繰上り)のマイネルバイカがいちばん怖いと思っていましたよ。やっぱり最後は4キロ差ですね」と、沖調教師はサバサバとした表情。白山大賞典JpnⅢの3連覇は断たれたが、このあとは過去に5回出走して勝てていない浦和記念JpnⅡ以外のレースを経て、名古屋グランプリJpnⅡの3勝目を狙いにいくとのことだ。
 それにしても、マイネルバイカは巧く立ち回った。道中はレースを引っ張るエーシンモアオバーの後ろでマークして、最後の直線では前を走る2頭の間から進出。出走メンバーのなかで一番の瞬発力を披露して、初めての重賞制覇を飾った。
 重賞初勝利となったのは、管理する西村真幸調教師も同じ。「以前は気性が荒かったのですが、やっと坂路でも調教できるようになって、上昇してきたように感じます」と、6歳馬ながらも今後の成長に期待ができる様子。「JBCは賞金的に厳しいですよね」とのことで、こちらはJRA東京のブラジルカップの連覇を視野に入れていくそうだ。
 柴田大知騎手もダートグレードレース初勝利。「エーシンモアオバーの後ろを取れたので、この位置を絶対に守ろうと思って乗りました」と会心の笑顔を見せていた。
 一方、JBCへの意欲を見せたのが、4着に入ったマヤノクレドを管理する名古屋の川西毅調教師。「前走を勝ったあとは、ここに出るしかないでしょ、と思っていました。いいレースでしたね」とうれしそう。今井貴大騎手も「2走前に僕が初めて乗ったときとは馬のデキがまったく違いましたね。しまいに賭ける競馬をしようと思っていましたが、それにしてもよく伸びてくれました」と、マイネルバイカに次ぐ上がりタイムで差を詰めたレース内容を、興奮気味に話した。
柴田大知騎手
2周目の3コーナーで仕掛けようかと思ったんですが、そこで我慢したのがよかったですね。4コーナーではソリタリーキングよりも手応えが上だったので、間を割っていけました。小回りコースが得意なタイプではないんですが、今日は内枠を引けたのもよかったですし、うまく走らせることができました。
西村真幸調教師
北海道での2戦は体調がいまひとつでしたが、栗東に戻ってから腕利きの厩務員がうまく仕上げてくれました。これまでは自分から走っていく気持ちに欠ける面があったのですが、そのあたりがずいぶんと改善されましたね。それでも今日は、滑り込みで出走できた部分を含めて、運が向いていたと思います。


取材・文:浅野靖典
写真:国分智(いちかんぽ)