dirt
2015年9月30日(水) 大井競馬場 1200m

好位から直線抜け出す作戦通りの圧勝
ダート短距離の頂点を視界にとらえる

 JBCに向けた重要な戦い、Road to JBCが東京盃JpnⅡからスタートした。2015年のJBCは大井競馬場での開催であるため、同じ舞台で実施されるこのレースはまさに前哨戦。今年の短距離ダート交流重賞の優勝馬3頭に、昨年のJBCスプリントJpnⅠの1、2着馬も揃い、本番を見据えた実力馬たちが集結した。
 その中で、単勝1.8倍という断然の支持を集めたのがダノンレジェンドだ。昨年12月のカペラステークスGⅢでは重賞初挑戦で勝利を飾ると、ここまで4つのタイトルを積み重ね急成長を遂げた馬。その勢いは止まらず、今回も圧倒的なパフォーマンスを披露した。ライバル馬の騎手が、「勝ち馬のレベルが高すぎる」と口にしたほどだった。
 ゲートが開くと、好スタートを切った南関東勢、ゴーディー、セイントメモリー、コアレスピューマが先行争いを演じたのだが、二の脚の速さでシゲルカガが先頭に立った。大外枠のダノンレジェンドはあまり良いスタートではなかったが、鞍上のミルコ・デムーロ騎手はすかさず2、3番手まで押し上げた。逃げも予想された2番人気のコーリンベリーは、トモを滑らせたとのことで、いつもより後ろの位置取り。3コーナーあたりで外から3番手まで進出した。一方、実績馬ドリームバレンチノは後方からレースを進めていた。
 直線に入ると早くも先頭に立ったダノンレジェンド。「隣で馬が走っていることが好きな馬なので、逃げ馬が止まった時は少し不安でしたが…」とデムーロ騎手は心配したそうだが、そのまま楽々と後続を突き放し2馬身差の快勝となった。勝ちタイムは1分10秒9(稍重)。
 2着には、末脚勝負に徹したドリームバレンチノ。58キロの斤量を背負いながらも確実に脚を伸ばし、ジーワン馬の底力を示した。「次に向けていい走りができました。JBCでの逆転の自信? ありまよ!」と岩田康誠騎手は力強い言葉を残した。
 3着はコーリンベリー、4着はシゲルカガとJRA勢が上位を独占。地方最先着は、兵庫のタガノジンガロで5着だった。
 以前から「砂を被ることが嫌い」とコメントしてきたダノンレジェンド陣営。通常、1200メートルの外枠は不利と言われているが、この馬にとって“揉まれない”大外枠というのはプラスに働いたとのこと。外を周りすぎないよう、前のポジションを確保したデムーロ騎手の好騎乗も光った。
 状態に関しては、前走のクラスターカップJpnⅢでは80%程度の仕上がりだったそうだが、「今回は、前回より少し調教を強めました。JBCに向けて上積みはまだまだあります」と村山明調教師。100%の状態で出走した時、果たしてどんな強さを見せてくれるのか、この後の調整過程にも注目したい。そして、村山調教師は大一番に向けてこう語った。
 「今年の初めからJBCを目標にローテンションを組んできたので、もちろん勝ちたいですよ。ただ、ジーワンはそんなに簡単に勝てないですからね。人気にもなるでしょうからプレッシャーもありますが、うまく状態を作って、騎手にバトンタッチしたいと思います」
 JBCスプリントJpnⅠは、このダノンレジェンドを巡る戦いになることは間違いない。しかし各騎手からは、「次は57キロの同斤量」「一叩きして良くなる」など次走に向けて前向きな言葉も多く聞かれた。約1カ月後、ダート短距離の頂点を賭け、どんな戦いが繰り広げられるのだろうか。
ミルコ・デムーロ
騎手
2、3番手につけるのは作戦通りで、道中はずっと自信を持って乗りました。この馬の良さは賢いところ。とてもカッコイイ馬です。今日は、ダートのジーツーに初めて勝って凄く嬉しいです。まだダートのジーワンで勝ったことがないので、次は楽しみですし、がんばります。
村山明調教師
パドック、返し馬からも今日はいい状態で臨めているなと感じていました。思ったよりスタートが遅くて焦りましたが、騎手が作戦通り2、3番手につけてくれたので安心しました。JBCでは斤量も増えるし、枠も気になるし、相手も上がりますが、この馬の力を発揮できればいい競馬ができると思います。

地方最先着は、兵庫のタガノジンガロで5着だった。

取材・文:秋田奈津子
写真:岡田友貴(いちかんぽ)、NAR