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2015年7月8日(水) 大井競馬場 2000m

道悪でも直線一気の豪脚を披露
人気2頭の決着も次元の違う強さ

 フルゲートにこそならなかったものの、中央からは全日本2歳優駿JpnⅠを制したダート2歳チャンピオンのディアドムス、兵庫チャンピオンシップJpnⅡで9馬身差圧勝のクロスクリーガー、ユニコーンステークスGⅢで鮮やかに直線一気を決めたノンコノユメなどが出走。地方馬では、『ダービーウイーク』から東京ダービーの1、2着馬、北海優駿、兵庫ダービーの勝ち馬、さらに南関東一冠目・羽田盃の勝ち馬と、3歳ダートチャンピオン決定戦のJpnⅠにふさわしい顔ぶれとなった。
 しかし天気は最悪。本場馬入場後、各馬が返し馬を終えてスタートを待つ間に風も出てきて雨の降りもさらに強くなり、全面に水が浮く馬場状態で、雨中の決戦となった。
 1番人気のクロスクリーガーがすんなりと先頭に立ち、ライドオンウインドが2番手、ポムフィリアも続き、その外に並びかけたラッキープリンスは行きたがるのを鞍上の今野忠成騎手が抑えている様子だった。そしてパーティメーカーが5番手、もう1頭人気を集めたノンコノユメも向正面で接近し、1コーナーを最後方で回ったストゥディウムも徐々に位置取りを上げてくるなど、普段は後方から直線勝負の馬たちも馬場状態を考慮してか、早め早めに押し上げて来ていた。
 直線を向いてもクロスクリーガーが単独先頭で、岩田康誠騎手の手ごたえは楽なまま。ライドオンウインドは後退し、ラッキープリンスが2番手で粘っていたが、クロスクリーガーはいざ岩田騎手に追い出されると、後続との差を徐々に広げていった。そのまま逃げ切るかにも思えたが、水しぶきを上げながら差を詰めてくる馬が1頭、やはりノンコノユメだった。残り100メートルのところでクロスクリーガーをとらえると、そのまま一気に交わし去り、あっという間に2馬身半もの差をつけての完勝。2着のクロスクリーガーから5馬身差をつけられたもののラッキープリンスが3着に粘り、4コーナーで勝ち馬とほぼ同じ位置にいたストゥディウムが直線脚を伸ばして4着に入った。
 2着に敗れた岩田騎手は、残り100メートルのあたりまでは勝ったと思っていたという。ところがノンコノユメが一気に迫って来たのがわかったときは、「ウソやろと思った」と。負けて悔しいというより、「この馬場であの脚を使われては……」と、半ば呆れたような岩田騎手の表情こそが、ノンコノユメの強さを物語っていた。
 クロスクリーガーは、逃げて直線後続を突き放してという、逃げ馬として相当に強いレースをしている。上り3ハロンが38秒7。しかしノンコノユメはそれを1秒4も上回る37秒3で上った。ユニコーンステークスGⅢで見せた次元の違う末脚を、水の浮く不良馬場で、しかも初めての2000メートルという距離でも存分に発揮して見せた。ルメール騎手も「ダートではこの馬が一番強い」と興奮気味に話していた。
 人気・実力ともに抜けていた2強から離されたとはいえ、ラッキープリンスは東京ダービーの勝ちタイムよりコンマ4秒タイムを縮めての3着。羽田盃を制したストゥディウムも2強に次ぐ上り3ハロン39秒3という脚を使っての4着。南関東二冠それぞれの勝ち馬も、最悪の馬場コンディションながら、持てる力を存分に発揮した。
C.ルメール騎手
もうちょっと前に行ければと思っていましたが、スタートが速くはないので、思ったよりうしろからになりました。今回は初めての2000メートルでも、前回のマイルと同じようにすごい脚を使ってくれました。普通のダート馬はワンペースで最後の脚はあまり使えないんですが、この馬は瞬発力がすごいです。
加藤征弘調教師
直線の中ほどまではいつもヒヤヒヤするんですが、動き出してからは届くのではという感じはしました。毎回(いい方に)期待を裏切ってくれる馬です。やっと体もしっかりしてきて、まだまだ成長する余地は多分にあると思います。間隔を詰めて使ったので、このあとはゆっくりさせようと思っています。

東京ダービー馬ラッキープリンスが3着に粘った。

取材・文:斎藤修
写真:いちかんぽ(国分智、築田純)