スーパースプリントシリーズ特集
 競走距離1000メートル以下のレースのみで構成されるシリーズ競走、『スーパースプリントシリーズ(略称:SSS)』。4年目となる本年は6月12日(木)~7月21日(祝月)の間、トライアル4戦およびファイナルの計5戦で実施します。
 SSSは、超短距離戦で能力を発揮する異才の発掘と、各地方競馬場で実施可能な最短距離を極力活かすためワンターン(コーナー通過が3~4コーナーのみ)のスプリント戦によるシリーズとして2011年に創設されたもので、各地区の超スピードホースが、トライアル、そしてファイナルで極限の速さを競います。

 SSSの創設以来、名古屋でら馬スプリントとファイナルの習志野きらっとスプリントを3連覇していた笠松のラブミーチャンが昨年引退。地方競馬のスプリント界に、新たなスターの誕生が待たれます。

 激戦必至の究極のスプリント戦をぜひお見逃しなく!

スーパースプリントシリーズ2014の総括はこちらです
※下の“タブ”をクリックするとご覧になりたいレースの記事に切り替わります。

スプリント戦でも実力発揮
全国区の力を披露する勝利

 2歳戦以外では年に1度しか行われない園田競馬場の820メートル戦。過去3回の園田FCスプリントでは、先行した馬が最低1頭は2着以内に粘り込んでいる。
 絶対的なスピードの持ち主に注目が集まる一戦だが、他地区からの遠征馬が加わる上に、通常はまったく使われない距離。「むずかしいなあ」という声は、パドックのあちこちから聞こえていた。その影響があるのかどうか、締切20分前の単勝1番人気は地元のジェイフォース。同馬は園田で5戦4勝の成績ながら、前走1着のレースはA2クラス。最終的には2番人気となったが、「よくわからない他地区よりも地元の馬」という選択をする人が多かったのかもしれない。
 ただ、馬連の人気は、高知のディープハントからが中心。予想の手がかりが少ないなかで、昨年の習志野きらっとスプリント2着の実績と、地元の木村健騎手が騎乗するということは、十分な強調材料になったようだ。
 その相手として人気を集めていたのは、佐賀のエスワンプリンスと高知のファイアーフロート。ジェイフォースも連勝式で高い評価となっていた。
 ゲートが開くとスマイルヴィジットが先手を取り、エスワンプリンスが離されずについていく。そこに「二の脚が速い」(大柿一真騎手)というスターボードが加わって、そして一気に先頭を奪った。3コーナーあたりからはスターボードとエスワンプリンスが並んで逃げる形。その後ろからはジェイフォース、ファイアーフロートなどが追走したが、前の勢いは止まらなかった。
 後続が懸命にスピードを維持するなかで、先頭の2頭は直線入口で粘り込みの態勢。最後は余裕ある手応えでエスワンプリンスがスターボードを突き放し、実績上位の力量を誇示してみせた。
 レース終了後、検量室前に走ってきたエスワンプリンスの手島勝利調教師は、愛馬の1着を関係者に確認すると、「よしっ!!」と声を上げて握りこぶし。ゲートまで付き添っていたためにレースがほとんど見えていなかったそうで、「(母の)エスワンスペクターの雪辱(2003年兵庫ジュニアグランプリGⅢ・12着)を果たせました」と、肩の荷が下りたというような表情を見せた。
 逆に悔しそうだったのが、2着に粘ったスターボードの大柿騎手。パトロールビデオを見ながら、「内と外の差がなあ……。あの位置(エスワンプリンスが通ったインコース)に入りたかったですよ」と、苦笑いが出てくるばかりだった。
 3番手以下の馬が差を詰められないなか、唯一突っ込んできたのがディープハント。「この枠だとスタートで滑りやすいんですが、案の定ダッシュがつかなくて。コーナーでは外を回らずに追い上げられましたが」と、木村健騎手はレースを振り返った。
 しかしながら、園田FCスプリントは第1回から4回連続で『1着と3着が単勝3番人気以内で、2着が逃げるか先行した単勝8番人気以下の馬』での決着。このデータは、ぜひ来年まで覚えておきたいものだ。ここまでくると、もう偶然とはいえないのではないだろうか。
鮫島克也騎手
短距離のほうがいいタイプですね。スタート後に追いながら行かせたのは初めてでしたが、反応のいい馬なのでこの距離でも大丈夫だろうとは思っていました。ただ、コーナーでは少し外に張る感じがありました。でも、本来だったらもっとスタートが速いはず。夏場がいまひとつというタイプにも感じます。
手島勝利調教師
距離が短すぎる点が心配でしたし、馬も絶好調とまでは言えないという感じがありました。それでもここ2走がふがいない結果だったので、巻き返せてよかったです。習志野きらっとスプリントは一応予定しますが、参加するだけという形にはしたくないので、馬の状態とオーナーと相談しながら検討します。



取材・文:浅野靖典
写真:桂伸也(いちかんぽ)