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2014年12月29日(月) 大井競馬場 2000m

ライバルとの競り合いも4馬身差圧勝
地方の期待馬も上位に食い込む健闘

 中央勢6頭のうちGⅠ/JpnⅠ勝ち馬が5頭。単勝1.7倍の圧倒的な支持を受けたホッコータルマエがもし勝てば、今年ダートGⅠ/JpnⅠ・3勝目でコパノリッキーに並ぶ。単勝4.1倍で2番人気のコパノリッキーが勝てば、同4勝目で単独トップとなる。そのほかのGⅠ/JpnⅠ勝ち馬も上位人気を占め、まさに2014年を締めくくるダートチャンピオン決定戦となった。また、2011年にこのレースが地方競馬で初めて国際GⅠに格付けされて以来、初の海外からの遠征馬を迎えたことでも注目となった。
 人気2頭は隣同士の枠に入り、抜群のスタートを切ったのはホッコータルマエだったが、コパノリッキーの田邊裕信騎手が行く気を見せてハナを奪った。ホッコータルマエは無理には競らず控えて2番手から。アメリカのソイフェットが続き、クリソライト、サミットストーンらも追走した。
 向正面では、中央勢で唯一格下のロイヤルクレストがイチかバチかの勝負に出て一気に先頭に立った。しかしそれも3コーナーまでのこと。コパノリッキーが再び先頭に立ち、3~4コーナー中間では外からホッコータルマエが並びかけ、早くも人気2頭の一騎打ちに。しかし直線を向いてすぐに追い出されたコパノリッキーに対して、ホッコータルマエの幸英明騎手は、相手を見て、追い出しのタイミングを測る余裕があった。直線半ばからじわじわと引き離し、4馬身差をつけてホッコータルマエの圧勝となった。
 その勝ち馬の直後を追走していたサミットストーンがゴール前でコパノリッキーに迫って3着。中団から脚を伸ばしたハッピースプリントが4着で、地方の注目馬2頭も上位に入る健闘を見せた。
 アメリカから遠征のソイフェットは、ホッコータルマエの直後3番手あたりを追走していたが、1000メートルを通過したあたりで手ごたえがあやしくなり、残念ながら最下位での入線となった。
 それにしてもホッコータルマエは、ドバイワールドカップのあとは他の遠征馬より帰国を遅らせるほど体調を崩しながら、よくここまで戻したものと思う。調整過程で筋肉痛を起こし、急仕上げで臨んだJBCクラシックJpnⅠは4着。しかしそこを叩いたことで本来の力を取り戻し、チャンピオンズカップGⅠでの勝利。そして昨年も帝王賞JpnⅠと東京大賞典GⅠを制している大井2000メートルの舞台でさらに強いレースを見せた。
 「馬が、走ることを楽しみにしていた」という西浦勝一調教師の言葉が印象的だった。チャンピオンズカップGIのあとはそれほど体調が上向いていたということなのだろう。幸騎手は、「最近では最高のデキで、これで負けたらしょうがないという感じでした。しばらくは負けない気がします」と、今後への期待と自信をのぞかせた。これでダートGⅠ/JpnⅠは7勝目。年が明けてまだ6歳なだけに、ヴァーミリアンによる9勝という記録の更新も見えてきた。次走には川崎記念JpnⅠを予定。そして、「どこまで通用するのか、もう一度ドバイへ挑戦したいと思っています」(西浦調教師)とのこと。
 2着のコパノリッキーは、前走チャンピオンズカップGⅠではスタートで後手を踏んだ上に道中は馬群の中を進むことになってレースにならず。しかし今回は自分のペースに持ち込んでの真っ向勝負。田邊騎手は、「右回りだと直線を向いたときの手応えがいまひとつというのはあるかもしれません」とのこと。しかし年が明けてまだ5歳。来年はこの2頭がダート中距離路線の中心となることは間違いなさそうだ。
 ゴール前でコパノリッキーを交わそうかという勢いがあったサミットストーンの矢野義幸調教師は、かなりの期待を持って臨んだのだろう。「もうちょっと馬場が乾いてくれれば」と悔しそうな表情を見せた。
 ハッピースプリントは、結果的に今年は南関東二冠を制したまでで、ダートグレードのタイトルには手が届かず。とはいえ、ローマンレジェンド、ワンダーアキュート、クリソライトというGⅠ/JpnⅠ勝ち馬であり、今年もダートグレードの勝ち星があるという一流馬に先着しての4着。「前回(勝島王冠)よりはだいぶよくなっていましたが、一番いい状態に比べるとまだまだです」と吉原寛人騎手。サミットストーンとともに、来年への期待を抱かせるレースぶりだった。
幸英明騎手
スタート次第で逃げることも考えていましたが、今回はコパノリッキーが行ったので、それを見ながらという形になりました。手ごたえ抜群で、直線を向いた時は勝てると思いました。前走を勝って、また今回は調教の感じからすごくよくなってるなと思っていましたが、そのとおり強くなっていました。
西浦勝一調教師
昨年のジャパンカップダートではソラを使って負けたんですけど、今日は最後まで一生懸命走るんだというのを見せてくれました。この秋に入ってから、より成長したタルマエが見られたと思います。まだまだ挑戦者であり続けたいと思っていますので、来年はもっと強いタルマエを見せたいと思っています。


アメリカから参戦したソイフェットは
最下位に終わった


取材・文:斎藤修
写真:いちかんぽ(国分智 岡田友貴)