dirt
2014年8月13日(水) 盛岡競馬場 1200m

直線先頭に立って後続を振り切る
復活の重賞制覇でJBCへ手ごたえ

 盛岡競馬場の正門をくぐると、「JBC開催まで82日!」という大きな看板が目に入った。地方競馬の祭典が12年ぶりに盛岡競馬場にやってくるとあって、場内はすでにJBCムードが漂っている。
 そんな中、夏恒例の短距離の交流重賞クラスターカップJpnⅢが行われた。過去の優勝馬の実績を見ると、2001年のノボジャック、2010年のサマーウインド、2012年のタイセイレジェンドは、その年のJBCスプリントJpnⅠを制している。さらに今年は、このレースがJBCスプリントと同じ舞台であるため、例年以上に注目度が高まった。
 近走の成績や斤量差もあってか、JRA勢5頭の人気はかなり割れており、混戦模様のメンバー構成。その中で、これからのスプリント戦線を盛り上げてくれそうな存在が現れた。4歳牝馬のサマリーズだ。約1年8カ月ぶりの重賞制覇を飾り、見事な復活劇を見せてくれた。
 「スタートのタイミングが合わなくて出遅れてしまったが、すぐに二の脚でカバーしてくれた」という藤岡佑介騎手のサマリーズは、最内から押して先手を取ったタイセイレジェンドの2番手につけた。2番人気のスイートジュエリーは外目の好位、1番人気のアドマイヤサガスは馬群の中で先行勢を見る態勢。シルクフォーチュンはいつものように後方からレースを進めた。
 直線に入り、残り200メートルあたりでサマリーズが先頭に立った。そのまま押し切ろうというところに後続馬たちも末脚を伸ばし、ゴール前ではスイートジュエリーが勢いよく迫ってきたが、クビ差振り切って優勝を決めた。
 「夏は牝馬が強い」とは言うが、結果的に斤量52キロの牝馬のワンツーフィニッシュとなった。3着には大外から伸びたシルクフォーチュン、アドマイヤサガスは直線で弾けず4着に敗れた。地方馬最先着の5着には、武器である末脚をしっかりと発揮した船橋のアイディンパワーが入った。
 サマリーズは、2012年の全日本2歳優駿JpnⅠを制し、2歳ダートチャンピオンに輝いた馬。カラ馬に絡まれながらも、後続を3馬身突き放して逃げ切ったレースは相当なインパクトがあり、当時から陣営は、この馬のスピード能力を高く評価していた。その後、芝の重賞で大敗。再びダート路線に戻るも元気のない成績が続いていた。しかし2走前の三宮ステークス(阪神ダート1200メートル)で久しぶりに勝利をあげ、複調気配を見せていたのである。
 藤岡健一調教師に、サマリーズの何が変わったのか尋ねると、「体も大きくなっているが、とにかく状態が良くなった」という返答。牝馬は、一度調子を崩すと立て直しに時間がかかるというが、まさに1年以上をかけてジーワン馬の能力を出せる状態に戻してきたということだ。
藤岡佑介騎手
2番手だったので自分がペースを作るつもりでレースを引っ張っていこうと考え、いい形になりましたね。逃げている馬も力のある馬ですし、こちらも最後まできっちり力を出し切ろうと思いました。最後はクビ差くらい残っているのではないかと。左回りの1200メートルは合う条件ですしJBCが楽しみですね。
藤岡健一調教師
この夏はいい状態でくることができたので期待していました。よく復活してくれました。これからはスピードを生かして1200メートルに特化していきたいとも考えています。JBCと同じ舞台を経験できたのは大きいですね。まだまだ改善の余地はありますし、何より女の子なので機嫌をとるようにしていきます。




 レース内容も進化しているようで、「ここ2戦は控える競馬をしていたので、今日は馬もそれを理解していました。ゴールまでしっかり走り切ってくれたことがとても良かったですね。勝てなかったここ1年ではなかったことですから」と、藤岡佑介騎手も手ごたえを感じている様子だった。
 今後は、もちろん11月3日のJBCスプリントが目標だ。今回よりもさらに相手は手強くなるだろうが、2度目のジーワン制覇に向けて、またJBCスプリント初の牝馬の優勝を目指して、サマリーズの快進撃が始まる。

取材・文:秋田奈津子
写真:佐藤 到(いちかんぽ)