dirt
2014年7月21日(祝・月) 盛岡競馬場 2000m

厳しい流れでレコード決着
軽量生かし直線で抜け出す

 2002年に続き、2度目のJBCイヤーを迎えた岩手競馬。その年度で1つめのグレードレースになるのが、マーキュリーカップJpnⅢ。今年のマーキュリーカップは、いろいろな意味で新しい局面を感じさせるシーンがあった。
 勝ったのは4番人気のJRAナイスミーチュー。橋口弘次郎調教師が「軽い負担重量(55キロ)ということもあってか、前目の位置で競馬ができた」というように、JRA勢では一番後方から末脚勝負と思われた馬が、外々追走から3コーナーでは3番手まで上がり、直線抜け出し。内で懸命に粘っていた2着クリソライトの内田博幸騎手が「理想的な流れだったが、重量差が大きかったのでは」と語ったように、他のJRA所属馬が59や58キロといった重量を課せられていたのに対し、大きなアドバンテージがあった。
 マーキュリーカップの負担重量は……
 
4歳以上54キロ、3歳50キロ、牝馬2キロ減、ただし下記(1)から(3)のとおり加増する。(2歳時の成績を除く)
(1) 平成26年7月16日までのGⅠ/JpnⅠ 1着馬5キロ、GⅡ/JpnⅡ 1着馬3キロ、
 GⅢ/JpnⅢ 1着馬1キロ増
(2) (1)の重量に加え、G/Jpn競走3勝以上馬は1キロ、更に2勝ごとに1キロ増
(3) 負担重量の上限は4歳以上60キロ、3歳56キロ、牝馬2キロ減

 なかなか大胆に重量差をつける規定であり、最近は他地区のグレードレースでもかなり大きな重量差をつけるハンデ戦などが実施されている。今回のナイスミーチューなどはこの恩恵を生かしたといえるだろう。実力で負担重量ほどの差はなかったと思われるが、「砂を被るのが嫌いな馬」(小牧太騎手)がやすやすと絶好位を確保するのに、55キロは大きく作用したに違いない。
 「レコードを出すような馬ではないんですけれど」(小牧騎手)と驚いていたように、2分1秒9の勝ち時計は、今回3着のシビルウォーが一昨年に出したレコードを0秒2更新。橋口調教師はひとしきりインタビューに答えたあとに、「私、ここで4戦4勝なんです」と。ユートピアで当時GⅠのダービーグランプリ、そしてマイルチャンピオンシップ南部杯GⅠを連勝して以来の盛岡で、自己の連勝記録を更新していた。
 地方他地区勢は南関東から“史上最高”と断言できる豪華メンバーが名を連ねた。帝王賞JpnⅠが直前回避となった船橋サミットストーンの登録には驚いたが、4コーナーで先頭に並んでの4着は見せ場十分。6着インサイドザパーク、7着アウトジェネラルまで先頭から1秒1差は各陣営からすれば不満が残るかもしれないが、十分にその強さは伝わった。
 南関東古馬のダートグレードレースは、帝王賞や川崎記念のようなJpnⅠがあるが、2000メートル前後でのJpnⅡ、Ⅲレースは意外に少ない。サミットストーンの石崎駿騎手が、「あまり速いタイムの決着では厳しい」と語ったように馬場状態は合わなかったようだが、決して戦えない条件でもないということは感じ取っただろう。盛岡のJpnⅢが南関東勢にとって“適クラ”となる可能性は十分にある。
小牧太騎手
いつもより前の位置が取れたことで強いレースができました。砂を被るのが嫌いな馬なので、被らない位置で競馬がしたかった。先行する馬が少なかったことも幸いしました。レコードタイムを出すような馬ではないんですけれど……。
橋口弘次郎
調教師
いつも追っつけて後方を追走する馬なのですが、軽い負担重量ということもあってか、思ったよりも前目の位置で競馬ができました。近走思ったような結果が得られませんでしたが、2000メートルくらいがベスト。なんとか権利を取れてJBCにも来られれば良いのですが。



 最後に地元勢。着順的には完敗だったが、岩手でここまで15戦13勝のコミュニティが1番枠からレースを牽引した。後続が厳しく追走したため、そのリードは3コーナーまで保たなかったが、1000メートル通過59秒6のハイペースで走ったことは今後につながる。上位争いが期待されながら、夏負けの兆候が出て直前回避のナムラタイタンと並んで、秋以降の反攻があることを期待したい。

取材・文:深田桂一
写真:佐藤到(いちかんぽ)