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2015年1月21日(水) 大井競馬場 1800m

初めての57キロでも女王の貫録
直線並ぶ間もなく抜け出し完勝

 大寒の時期らしく日中の最高気温は3度前後という厳しい寒さに見舞われた大井競馬場。午後から小雨がぱらつき始め、メインレースのパドックでは冷たい雨が本降りとなった。
 今年で18回目を迎えた、2015年最初の牝馬ダートグレード、TCK女王盃JpnⅢは、これまでで最も少ない8頭立てで行われた。地元南関東勢の参戦が1頭のみというのは寂しい限りであるが、JRA勢の5頭は注目度の高い面々が揃った。
 1番人気は、昨年のJBCレディスクラシックJpnⅠの覇者サンビスタ。単勝1.8倍と当然のごとく支持を集めた。2番人気は、JBCレディスクラシックJpnⅠの2着馬であり、前走のクイーン賞JpnⅢを快勝したトロワボヌールで3.2倍。目下7連勝中の勢いで重賞初挑戦の上がり馬ソーミラキュラスが3番人気で3.8倍。この3頭に人気は集中し、3連複のオッズは1.9倍となっていた。
 ゲートが開き先手を主張したのはエスメラルディーナ。2番手にレッドクラウディアがつけ、外3番手にアクティビューティ。最内にトロワボヌールが位置取り、「戸崎騎手(トロワボヌール)を見ながら競馬をした」と言うクリスチャン・デムーロ騎手のサンビスタがその直後を追走。その外にソーミラキュラスが続き、8頭が一団となってレースが進んだ。
 4コーナーあたりでペースが上がり、各騎手の腕がさかんに動き出した。その中でひときわ手応えが良さそうだったのがサンビスタだ。直線では、残り200メートルで前の馬たちに並ぶ間もなくあっさり抜け出すと、そのまま突き放し余裕のゴールイン。「楽な勝ち方でした」(C・デムーロ騎手)という言葉通りの強い内容で今年初戦を飾った。
 2馬身半差の2着は5番人気のアクティビューティ。牝馬限定のダートグレードは今回が13走目で、これまで1度しか掲示板を外していないという抜群の安定感は、8歳になっても変わらないようだ。3着には直線外から末脚を伸ばしたソーミラキュラスが入り、このメンバー相手でもヒケを取らないという力を見せた。
 逆転を狙ったトロワボヌールは、直線で最内を突いたが伸び切れず4着にとどまった。戸崎騎手によると「右回りで(外に)張り気味に走っていた。左回りの方が良い」とのことだ。
 さて、女王の走りをまざまざと見せつけ重賞3勝目を手にしたサンビスタ。前走のチャンピオンズカップGⅠでは、牡馬の錚々たるメンバー相手に4着と好走していただけに、初めて背負う57キロの斤量もこのメンバーでは関係なかった。角居勝彦調教師は「前走後の反動はなく、むしろ牡馬との競馬でプラスになりました」と手応えを掴んだ様子だった。この後はフェブラリーステークスGⅠに向かうとのこと。GⅠの大舞台で男馬たちを一蹴する姿をぜひ見たいものだ。
 そして、強力なJRA勢との戦いの中で見せ場をつくったのが、南関東から唯一の出走となった大井のレッドクラウディアだ。5着に敗れたものの2着馬からは1馬身ほどの差。力差はそれほどないという走りを見せた。森泰斗騎手は、「自分が乗った中では今日が一番状態が良くて、返し馬の時、ちょっと違うぞと思いました。スタートからの行きっぷりも良く、4コーナーではひょっとしたらという手応えでした。今日のレースでこの後の希望が持てました」とコメント。実績馬の復活なるか、次走に期待したい。
C・デムーロ騎手
スタートは遅かったのですが、前の集団にとりついて中団からとなりました。道中も手応えが良く、直線スペースを見つけて抜け出した時も楽な手応えでした。瞬発力がこの馬のセールスポイントです。2011年に兄のミルコが(TCK女王盃を)勝った時、自分は4着だったのでそのレースを勝てて嬉しいです。
角居勝彦調教師
前走後、短期放牧に出して、帰ってきた後も元気いっぱいでしたよ。パドックで馬体が光っていましたし落ち着いていたのでいいなと思いました。新興勢力もいたし、接戦になったことのある馬もいたのでどんなレースになるのかなと見ていました。今年1年、もっと強いサンビスタを見せられるよう頑張ります。


取材・文:秋田奈津子
写真:宮原政典(いちかんぽ)