10月中旬~11月上旬にかけて行われる各地の2歳主要競走(計7レース)を約3週間のうちに短期集中施行するシリーズ(2008年創設)。

 3歳馬によるダービーウイーク同様、各地の主要競走が短期間で楽しめる贅沢感や、先々への期待感を醸成できることが当シリーズ最大の魅力。また、11月以降のダートグレード競走(兵庫ジュニアグランプリ・全日本2歳優駿)への出走意識を高めることで、競走体系の整備促進にも資することが期待される。


2013年未来優駿の総括はこちらです

※下の“タブ”をクリックするとご覧になりたいレースの記事に切り替わります。


人気を集めた2頭の勝負も
レースを支配し逃げ切り完勝

 台風27号が接近している影響もあり、関西地方は朝から風が強いコンディション。園田競馬場の向正面の奥にある大阪国際空港では、飛行機が通常とは逆方向となる、競馬場に近づく形で飛び立っており、その爆音が普段より大きく競馬場内に響いていた。しかし午後3時頃になると風向きが変わり、飛行機の離陸方向もいつもと同じに戻った。
 そんな不安定な空模様でも、雨は傘が必要ない程度の量がときどき降るくらいだったというのは幸い。レース中もパラパラと雨が降ったが、ほとんどの観客は気にしている様子が見られなかった。
 さて、今年で6回目となる兵庫若駒賞。各新聞紙上でも、場内で行われた予想イベントでも、重い印はトーコーポセイドンとオープンベルトに集中。「どちらが強いのか」という単刀直入な問いかけもあるくらい、2頭の人気は抜けていた。
 それを数字で示すと、馬連複は騎乗合図がかかった時点が1.0倍で、最終的には1.1倍。まさに一騎打ちの様相だったが、馬連単などで人気が上だったのはトーコーポセイドンのほう。さらに同馬には、同じ厩舎の馬がほかに2頭出走しているという強みもあった。そしてそれはレース展開に表れた。
 ゲートが開いて勢いよく飛び出したのはトーコーポセイドンと、同厩舎、同馬主のトーコーニーケ。インコースを回ったトーコーポセイドンが1コーナーで先頭に立つと、トーコーニーケはすぐ後ろでガードを固めた。オープンベルト鞍上の田中学騎手はその姿を見ながら様子を窺う形になり、そこでペースが落ち着いた。
 しかし、そうなると伏兵陣が黙っていない。向正面中央付近でその流れを壊しにかかったのは、コヒルに騎乗した竹村達也騎手。1コーナーで最後方だったコヒルが3コーナー手前で先頭に並びかけた勢いは、観客をどよめかせるだけのものがあった。ただ、そこは断然の支持を集めた馬。並ばれたところでトーコーポセイドン鞍上の木村健騎手がGOサインを出すと、すぐさまコヒルを引き離しにかかった。それを合図にオープンベルトもスパート開始。しかしながら、人気2頭の差がなくなるまでには至らず、トーコーポセイドンが逃げ切り勝ち。オープンベルトが1馬身半の差で2着に入り、コヒルが9番人気ながら最後まで踏ん張って3着を確保した。
 トーコーポセイドンを管理する吉行龍穂調教師は勝利に満足気な表情をしていたが、「ウチにはまだ強い馬がいますからね」と一言。さらに「今後を楽しみにしてください」というコメントも残した。ということは、兵庫の2歳戦線にとって、このレースはいわゆるひとつの通過点ということか。2着に敗れた田中騎手も「この馬も大したものですよ」と、牝馬ゆえグランダム・ジャパンを含む今後に期待をかけていた。
 兵庫若駒賞は過去に兵庫ダービー馬を3頭も輩出している出世レースだが、そこに至るまでにはまだいろいろと変化がありそうだ。


木村健騎手
1コーナーの入りが速くなるとどうかなとは思っていたんですけれど、最後まで楽に行けました。完勝といっていいと思います。3コーナーで後ろから仕掛けてこられたときも、全く問題ありませんでした。
吉行龍穂調教師
馬体重の12キロ増は成長分といっていいでしょう。道中はこの馬のペースで行けていましたし、ゴールまで安心して見ていられました。今後はひと息入れて、年末の園田ジュニアカップを目指す予定です。


取材・文:浅野靖典
写真:宮原政典(いちかんぽ)