レースハイライト タイトル

2012年12月6日(木) 園田競馬場 1870m

実力断然の王者がまさかの敗戦
同世代の生え抜きが無欲の金星

 1着賞金が昨年の500万円から1000万円へ倍増となり、今年からファン投票にもなった園田金盃。すでに戦いの舞台が全国区となっているオオエライジンが負ける場面を想像できた人はどれくらいいただろう。地元園田ではここまで11戦10勝。たった一度の敗戦は、中央馬相手の兵庫ゴールドトロフィーJpnⅢでの3着で、先着されたのはスーニ、セイクリムズンというダート短距離路線のトップホース。地元馬相手には負けられない一戦だった。とはいえ、抜け出してしまうとソラを使うクセがあるオオエライジンだけに、負けるならなるほどこういうパターンかと思えるようなレースでもあった。
 オオエライジンは互角のスタートから、木村健騎手に気合を入れられるとすぐに先頭へ。トーコーレガーロがクビから半馬身ほどの差で併走し、直後にシンボリバッハ、さらにワールドハンターと、4頭がが先団を形成した。2周目の向正面に入ると、木村騎手の手綱は軽く動いてはいたが、先団の他馬の手ごたえはすでに一杯。このままオオエライジンの楽勝かとも思えた。
 しかし3~4コーナーで大外から一気にまくってくる馬が1頭。道中最後方を追走していたニシノイーグルだ。4コーナー手前あたりで、おそらく木村騎手はその気配を感じていだろう。懸命に手綱を動かし、ムチを入れてオオエライジンを鼓舞したものの反応はよくない。直線、馬場の中央を伸びてきたニシノイーグルが半馬身差し切ったところがゴールとなった。5馬身離れた3着には、やはり後方2番手から押し上げたパーフェクトランが入った。
 まさかの2着となった木村騎手は、「ぜんぜんハミを取ってくれなくて、ほかの馬が下がっていったときに、イヤイヤ抜けていった感じだった」と渋い表情。追走した格下馬があまりにも早く後退してしまったため、オオエライジンは完全に気を抜いてしまい、再度そのエンジンに火がともることがないままのゴールとなってしまった。前走JBCスプリントJpnⅠは一線級相手の1400メートル戦。そして今回は地元馬相手の1870メートル戦。まるで違うゆったりとしたペースに、馬が戸惑ってしまったようだ。

 勝ったニシノイーグルは、これが重賞初制覇。「ひとつでも上の着順がとれればとは思っていましたが、まさか勝つまでとは。(最後方追走は)この馬のスタイルです。前走(楠賞)はものすごいスローで、上り勝負になって2着に負けましたが、今回はそのときほどのスローにはならないと思っていたので」と川原正一騎手。直線ではオオエライジンに馬体を併せにいかず、意識して離れたところを追ってきたという好騎乗もあった。オオエライジンとは同世代で、同じく兵庫の生え抜き。2~3歳時の重賞では、菊水賞、兵庫ダービーでともに4着というのが最高の成績。今年4歳になって、9月の摂津盃で3着、そして前走の楠賞はほとんど勝ちに等しい内容での2着と、力をつけてきていたことも確かだった。
 実力を発揮できないまま地元馬相手に初の黒星を喫したオオエライジンだが、再び中央馬相手となる兵庫ゴールドトロフィーJpnⅢは地元開催のハンデ戦でもあり、あらためて期待したい。
川原正一騎手
状態は上向いていたので、どこまでやれるかという期待もありました。挑戦者の立場なので、気楽に乗れたのもよかったです。4コーナーは、ひょっとしたらという気持ちで回りました。まさか(オオエライジンンを)負かせるとは思ってなかったので、ここまで仕上げた関係者のみなさんには頭が下がります。
橋本和男調教師
今日は少し馬体が絞れて素軽くなっているとは思っていたんですが、オオエライジン相手にまさかこれほど走るとは思っていませんでした。前回は勝てるようなレースを負けていたんですが、今回は早めに前につけられて楽にレースができました。1カ月ほど休ませて、年明けの地元の重賞を使えればと思います。


取材・文:斎藤修
写真:桂伸也(いちかんぽ)