レースハイライト タイトル
dirt
2012年10月8日(祝・月) 盛岡競馬場 1600m

直線後続を寄せつけず完勝
7歳でも衰え知らずGⅠ・7勝目

 昨年は震災の影響によって東京競馬場での開催となったマイルチャンピオンシップ南部杯JpnⅠ。その東京競馬場に流れた岩手のジーワン・ファンファーレには感動したが、2年ぶりに南部杯が盛岡競馬場に戻り、そして久々に聞くジーワン・ファンファーレも感慨深いものがあった。雲ひとつない真っ青な空は、まるでそれを祝福しているかのようだった。
 そして7歳でもまだまだ衰えることを知らないエスポワールシチーも、岩手のファンの前で久々に他馬を圧倒するレースぶりを披露した。
 スタートで波乱が起きた。単勝2番人気のナムラタイタンが前につんのめるように躓いて騎手が落馬、競走中止となった。メイショウタメトモが積極的にハナを奪い、断然人気のエスポワールシチーは2番手。しかし半馬身と差はない。ナイキマドリードもピタリと追走。ダイショウジェットがそのうしろで早め4番手。アドマイヤロイヤルが続き、中団よりうしろから追いかけたスーニは向正面の中間で行き場をなくしたのか、鞍上が立ち上がるようなシーンがあった。
 3~4コーナーで手ごたえ十分のエスポワールシチーが前に並びかけると、直線を向いてメイショウタメトモ、ナイキマドリードが脱落。あとはもうエスポワールシチーのひとり舞台となった。ダイショウジェットが追ったが差は詰まらず、4馬身の差を保ったまま完勝。3着のアドマイヤロイヤルにはさらに6馬身の差がつき、いかにも盛岡のダートグレードらしい、実力以上に差が開く決着。1頭が落馬しても残ったJRA勢5頭が掲示板を独占。地方最先着の6着はダートグレード実績のあるナイキマドリードで、地元岩手勢にとっては厳しい結果となった。

 勝ったエスポワールシチーは、南部杯は3年ぶり2度目の制覇。GⅠ・JpnⅠは、かしわ記念に続いて今年2勝目で、通算では7勝目となった。
 前走のエルムステークスGⅢでは、上がり馬ローマンレジェンドと叩き合いの末、わずかの差で2着に敗れたエスポワールシチーだが、「若い馬と併せ馬になって、それで闘志が戻ってきたのか、調教もすごく弾んで走っていたので、これだったら絶対負けないなとは思っていました」と佐藤哲三騎手。
 「7歳ですけどまだまだ元気です。今年はこの先、最終的にジャパンカップダートを使いたいですね」と安達昭夫調教師。ちなみに、かしわ記念と南部杯を制した09年は、その後にジャパンカップダートも制している。その09年の再現となるかどうか。
 ダート中長距離路線ではスマートファルコンが引退し、地方のフリオーソも復帰にメドが立たず。一方で、先のローマンレジェンドなど若い馬が台頭してきていよいよ世代交代かという状況だが、エスポワールシチーは古豪健在をアピールするには十分のパフォーマンスを見せた。
 今回の南部杯は最終レースとして組まれたこともあり、表彰式はパドックで行われた。終了後、佐藤騎手は集まったファンひとりひとりのサインの求めに丁寧に応じ、それはスタンド2階からの“餅まき”イベントが終了してもまだ続いていた。そしてサインをし終えて引き上げる時に、残ったファンから拍手が沸き起こった場面は印象的だった。
佐藤哲三騎手
去年(の南部杯)も参加させていただきたかったんですけど、ぼくの怪我で乗れなかったので、今回はすごく気合を入れてきました。コーナーが2つの左回りは合ってると思うんで、乗りやすいですし、馬も走りやすいんじゃないかと思います。まだまだ老け込んでないんで、JRAのGⅠでも結果を出したいと思います。
安達昭夫調教師
夏があまりよくないので、放牧に出して北海道の涼しいところで過ごさせました。いい状態で帰ってきて、エルムステークスもいい状態だったんですけど、59キロと大外枠もあって、ちょっと負けてしまいましたけど、差し返そうという気持ちがあったので、あれでスイッチが入ったんだと思います。

地方最先着(6着)は船橋のナイキマドリード

取材・文:斎藤修
写真:森澤志津雄(いちかんぽ)、NAR