3歳馬によるダービーウイーク同様、各地の主要競走が短期間で楽しめる贅沢感や、先々への期待感を醸成できることが当シリーズ最大の魅力。また、11月以降のダートグレード競走(兵庫ジュニアグランプリ・全日本2歳優駿)への出走意識を高めることで、競走体系の整備促進にも資することが期待される。

 三部作のノンフィクション DRAMATIC3
 【第二部 未来優駿】
 〜草食系の若者が、熱くなる姿を見たくないか。この走りには必ずドラマがある〜


2011年 未来優駿の総括はこちらです。
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成長を続ける牝馬が圧勝
狙うはグランダム・ジャパン

 デビュー戦から4連勝で園田プリンセスカップを制したアスカリーブルが大井に移籍。今年の未来優駿・兵庫若駒賞は、9月末におけるチャンピオンが返上した王座をめぐっての争いになった。
 そこにエントリーしてきた9頭のうち、単勝10倍未満の人気を集めたのは4頭。前走でアスカリーブルにクビ差まで迫ったメイレディと、3戦2勝のケンスターハーバーが単勝1番人気を争い、1戦1勝で臨んできたマイアヴァロンとタケマルドンが、それに続いた。昨年はオオエライジンがこのレースでデビュー3連勝を達成。出世レースともいえるこの一戦から、今年も有望な若駒が登場するのかどうか。ファンの興味はそこに集まっているように感じた。
 風はややひんやりとしているが、強い西日が注ぎ込む午後4時前のパドック。出走9頭全馬がメンコをつけていたのは、この時期の2歳戦らしい風景といえる。そのなかでドッシリと構えて歩いていたのがメイレディ。1カ月前の園田プリンセスカップからプラス9kgという体重ながら、個人的には先月の印象より背が高くなり、そしてひと回り大きくなっていたように思えた。
 人気のもう1頭、ケンスターハーバーも落ち着いた様子で周回。1戦1勝の2頭はときどき小走りになるなど、幼い面がところどころで見受けられた。
 そのあたりがレースにどう影響してくるのだろうか。スタート直後に先手を取ったのは、その1戦1勝馬のタケマルドン。直後をメイレディがマークして、1コーナーでインを回ったマイアヴァロンが3番手。ケンスターハーバーは前2走と同じように、後方集団に陣取った。
 先頭集団の5頭に視線を戻すと、逃げていたタケマルドンは3コーナー手前で息切れ。マイアヴァロンは木村健騎手がムチを入れても、思ったほどの反応が得られていない様子だった。それを尻目にメイレディは余裕十分に3〜4コーナー中間付近で先頭に。その勢いのまま、あっさりと押し切ってみせた。
 「アスカリーブルがいないならね」とは、保利良次厩舎のスタッフ。今回は牡馬相手ではあったが、陣営としてはかなりの自信をもっていたようだ。
 2着にはメイレディと人気を分け合ったケンスターハーバーが後方から長く脚を使って入線。しかし1着との差は5馬身もあった。クビ差3着のハクサンドリームともども、今年の兵庫若駒賞は「キャリア3戦以上の3着内率100%」という馬が3着まで独占したわけだが、そのなかでメイレディの走りは完全に別格といえるものだった。
 「まだ成長すると思いますよ」と、保利厩舎スタッフ。この日の馬体重は6月のデビュー時に比べて23kg増。食事と稽古が実になって、そこに「勝った」という自信も加わったなら、今後の活躍も大いに期待できることだろう。しかしメイレディは、その名のとおり牝馬。保利調教師によると、この先に控える兵庫ジュニアグランプリJpnUと園田ジュニアカップは今のところ予定していないとのことだから、今年の兵庫の2歳戦線に新星が登場する余地は十分。オオエライジンが中心となった昨年と違い、しばらくは混戦が続くことになりそうだ。


下原理騎手
前走(園田プリンセスカップ)でも厩務員さんは自信を持っていて、でもスタートを失敗した影響で勝たせてあげられなかったんですよね。だから今回はスタートが決まって1〜2コーナーでいい位置につけられて、安心してレースを進められました。今日みたいな競馬ができれば、これから先もいいところを見せられると思います。

保利良次調教師
前回はスタートが悪かったぶんの負け。馬の成長がここのところすごいですからね。自信をもって送り出しました。次の予定は11月中旬の1組戦。そのあとは12月12日の笠松(プリンセス特別)に行こうと思っています。グランダム・ジャパンのポイントも狙っていきたいですね。
取材・文:浅野靖典
写真:三戸森弘康(いちかんぽ)