3歳馬によるダービーウイーク同様、各地の主要競走が短期間で楽しめる贅沢感や、先々への期待感を醸成できることが当シリーズ最大の魅力。また、11月以降のダートグレード競走(兵庫ジュニアグランプリ・全日本2歳優駿)への出走意識を高めることで、競走体系の整備促進にも資することが期待される。

 三部作のノンフィクション DRAMATIC3
 【第二部 未来優駿】
 〜草食系の若者が、熱くなる姿を見たくないか。この走りには必ずドラマがある〜


2011年 未来優駿の総括はこちらです。
※下の“タブ”をクリックするとご覧になりたいレースの記事に切り替わります。

早めに仕掛けて直線独走
同厩2強で決着も10馬身差

 地元盛岡のダートで4戦4勝のアスペクトと、同じく2戦2勝エスプレッソの対決ムードだった今年の若駒賞。早くから古馬並の好時計を叩き出して大差勝ちを演じており、大物感は十分。加えて同馬主、同厩舎、生産牧場まで同じであり、「現時点でどちらが強いのか」と関係者までもが興味津々という雰囲気の中でレースがスタートした。
 迷いなく逃げの手に出たのは山本政聡騎手のアスペクト、これに「勝負づけしようと思って押して行った」齋藤雄一騎手のエスプレッソ、ジュニアグランプリを勝って芝で3連勝中のワタリドラゴンらが追走するが、レース前半から展開は縦長に。それでもアスペクトの山本騎手には余裕があった。「(ライバルの)エスプレッソは切れるので、早めに仕掛けた」と3コーナーからペースアップ。これに後続は追走で精一杯になり、直線はまたまた独走。4度目の大差勝ちはならなかったが、ゴールではエスプレッソに10馬身の差をつけていた。重馬場での走破タイム1分38秒8も優秀だが、ラップタイムを確認すると、残り600メートルからペースアップして11秒9-11秒5-13秒1。これで山本政聡騎手は「マイペース」というのだから、アスペクトにとっては前半はスローの流れだったことになる。
 櫻田浩三調教師は「ゴールドマインより速かったな」と。9月12日に行われた古馬の重賞、青藍賞でのゴールドマインの勝ち時計は1分39秒0。その当日も稍重の馬場でかなり時計の出る状態だったが、その数字を独走でアッサリと上回った。今回の上位2頭で遠征したJRA札幌戦では見せ場すら作れなかったが、今年は震災の影響でまだ水沢競馬場での開催が実施されておらず、輸送の競馬を経験していなかったことも少なからず影響したであろう。
 アスペクトの母アプローズフラワーは1994年生まれ、今でこそ「メイセイオペラの世代」ということになるが、2歳(旧3歳)時にはJRA遠征を除き7戦7勝。岩手競馬が開催されない冬にも休日返上でJRA挑戦を続け、メイセイオペラよりも先に話題を集めた馬。そのアプローズフラワーも若駒賞優勝(当時は特別競走)、そして兄アテストも若駒賞を勝っており、アスペクトの優勝で母仔制覇、兄弟制覇を同時に達成。また2着エスプレッソの母はエーデルワイス賞GVを勝ったパラダイスフラワーであり、こちらが勝っても母仔制覇となるところであった。「未来優駿」と銘打たれた若駒賞ではあるが、今回はそれだけでなく岩手競馬の「過去と未来」を結びつけた一戦。めずらしく1、2着馬が揃っての記念写真が、その血筋への思い入れを象徴していた。


山本政聡騎手
逃げるのは予定通り。エスプレッソは反応のいい馬で切れるので、自分から早めに仕掛けてマイペースで走らせることを心がけました。折り合い面を心配しましたが、成長していますね。(デビュー前から乗っていて)愛着のある馬なので自分も応援していますし、まだどのくらい走るのか分からないほどですね。

櫻田浩三調教師
(青藍賞の)ゴールドマインの時計より速かったね。(エスプレッソと)2頭の勝負だとは思っていましたが、思っていたよりも差が開きました。先々のことは未定ですが、次走は南部駒賞へ向かいます。
直線で後続を突き放すアスペクト(写真右端)
2頭での記念撮影
(写真左より1着のアスペクト、2着のエスプレッソ)
取材・文:深田桂一
写真:森澤志津雄(いちかんぽ)