3歳馬によるダービーウイーク同様、各地の主要競走が短期間で楽しめる贅沢感や、先々への期待感を醸成できることが当シリーズ最大の魅力。また、11月以降のダートグレード競走(兵庫ジュニアグランプリ・全日本2歳優駿)への出走意識を高めることで、競走体系の整備促進にも資することが期待される。

 三部作のノンフィクション DRAMATIC3
 【第二部 未来優駿】
 〜草食系の若者が、熱くなる姿を見たくないか。この走りには必ずドラマがある〜


2011年 未来優駿の総括はこちらです。
※下の“タブ”をクリックするとご覧になりたいレースの記事に切り替わります。

2番手から直線先頭で押し切る
未来を見据えた会心の一歩

 例年11月に行われていたハイセイコー記念が、今年はこの時期の開催。過去には02年に一度だけ10月の開催があったものの、レース名が青雲賞だった時代から通算して44回の歴史で、今回はもっとも早い日程。未来優駿としても今年はここが幕開けとなった。
 南関東の2歳暮れから3歳の重賞戦線といえば、ホッカイドウ競馬出身馬の活躍が目立つが、そのホッカイドウ競馬はまだ開催を1カ月以上残している時期だけあって、出走15頭すべてが南関東デビュー馬同士の闘いとなった。
 全馬5戦以下の戦歴ながら、ここまで無敗の馬は2戦2勝のガトリングただ1頭。ほかに何頭かお手馬がいた戸崎圭太騎手がそのガトリングを選んだこともあり、ファンはこの馬を1番人気に支持した。
 メッシがハナを奪い、ピタリと2番手にドラゴンシップ、直後に2番人気のアイキャンデイがつけ、向正面に入るとガトリングが3番手外の絶好位にとりついた。
 しかし直線を向くとガトリングが徐々に後退。4コーナー手前で先頭に立っていたドラゴンシップに内からアイキャンデイが迫り、直線半ばからこの牝馬2頭が抜けだしての一騎打ちは、ドラゴンシップがアイキャンデイをクビ差で振り切っての勝利。2馬身差の3着にはダイヤモンドダンスが入った。
 ドラゴンシップは、デビュー戦で8馬身差の圧勝を飾り注目を集めた馬。しかし続くシーサイドスター特別ではハナを奪ったものの、終始直後でマークされたルイクリスタルラヴに直線で交わされ2馬身差の2着。続くゴールドジュニアーでは好位に控える競馬も、直線ではアイキャンデイに突き放され、さらにダイヤモンドダンスにも交わされ3着に敗れていた。ともに1番人気で連敗したことから4番人気と評価を落としていた今回は、ゴールドジュニアーと同じ上位3頭での決着も、逆転での勝利となった。
 臨戦過程では取りこぼしながらも、目標と定めたレースに向けてピークに仕上げ、そしてそれを獲りにいく、いかにも川島正行調教師らしい勝ち方だった。
 ハイセイコー記念を牝馬が勝ったのは、96年のセイントサブリナ以来15年ぶり。デビュー間もない馬が多く牡馬と牝馬の実力差があまりなかったこともひとつの要因だろうし、2歳牝馬の重賞・ローレル賞(11月11日・川崎)まで中3週というローテーション的なこともあっただろう。
 1、2着馬には全日本2歳優駿JpnIへの優先出走権が与えられるが、勝ったドラゴンシップは間隔をあけて、牝馬同士の東京2歳優駿牝馬の目指すとのこと。
 南関東の生え抜きが、未来への期待を抱かせる勝利となった。


御神本訓史騎手
ゲートも速かったので、いい位置につけて楽な競馬ができました。1コーナーに入る前にちょっと折り合い欠いたんですけど、ペースもうまく落ちたし、残り200を切ったあたりから追い出せば最後までもってくれると思って自信を持って追い出しました。遊びながら走っているので、まだまだ余力はあったと思います。

川島正行調教師
スタートして行ければ行ってもいいし、2〜3番手で砂をかぶらないようにと話していました。若い馬なので、徐々に仕上げていければと思っていて、それを積み重ねて、4戦目でこういう結果を出すことができました。すごく遊んで走る馬なので、それを直していければもっとよくなると思います。
取材・文:斎藤修
写真:宮原政典(いちかんぽ)、NAR