レースハイライト タイトル

2011年9月8日(木) 浦和競馬場 1400m

直線突き抜け5馬身差圧勝
8歳にして悲願の重賞初制覇

 かつてはテレビ埼玉杯として親しまれてきた南関東限定重賞だが、3年前からテレ玉杯オーバルスプリントとして生まれ変わり、今年からは中央とのダート交流重賞として実施。それにともない南関東格付もSIIIからSIIに変更された。
 同距離で実施されているさきたま杯JpnIIに比べれば中央勢が小粒な印象は否めないが、それでも層は厚い。
 柴山雄一騎手がエスコートした8歳馬ダイショウジェット(4番人気)にとって忘れられない1日になっただろう。レース後に、「やったぁ〜!」と関係者は喜びを爆発させていたが、ここまで長い道のりだったに違いない。ダートグレードの短・中距離戦を高いレベルで戦ってきたが、あと一歩及ばず歯がゆいレースが続いていた日々。52戦目にして悲願の重賞初制覇で、550キロを超える雄大な馬体に真紅の肩掛けが映えていた。
 「最近はスタートが速くないから仕掛けていってあの位置につけました。跳びが大きい馬なのでリズムに乗るのに時間はかかりましたね」(柴山騎手)。中央のトーホウオルビスとトーホウドルチェが先手を取る中で、ダイショウジェットは中団付近からじっくりと追走していった。
 勝負どころでは前を行く2頭に1番人気のナイキマドリードが並びかけていくと、大外からダイショウジェットも一気に進出していき、直線では豪快に突き抜けた。「前がやり合ってくれていたのでシメシメと思っていましたが、まさかこんなに突き放すとは思いませんでした。最後は気持ち良かったです」(柴山騎手)。2着のトーホウドルチェに5馬身差をつける完勝に終わった。
 「まだ衰えはない」と関係者が口をそろえ、年齢を感じさせない迫力あふれんばかりの馬体と走りには脱帽する。「ニンジンは切らずに1本縦のまま頬張るんですが、見ていると本当にすごいですよ(笑)。とにかくよく食べる馬で、それが元気の源でしょうね」と馬場祥晃オーナーはうれしそうに話していたが、『食欲がある』というのは、人馬ともに共通の若さの秘訣だ。
 まだ具体的なローテーションは決まっていないようだが、今後もダートグレード戦線において楽しみな1頭であることに変わりはない。
 元気な高齢馬と言えば、今年9歳になった名古屋のキングスゾーンがいる。ここ最近のダートグレードレースでは荷が重くなっている印象があり、残念ながら今回も11着だったが、それでも地元に帰ればしっかり結果を出している。「馬は硬くならないし、筋肉の落ちもそんなにないね。競走馬は大なり小なり何かは抱えているものだけど、この馬は丈夫な方だからな」と長年連れ添ってきた吉田厩務員は愛馬の顔をなでながら目を細める。
 これが95戦目のレースだったが、これからどのくらいの時を砂上で刻んでいくのだろう。キングスゾーンも地方競馬を代表する名馬だと思う。
柴山雄一騎手
重賞を勝つことができて本当にうれしいです。休み明けの前走(サマーチャンピオンJpnIII・3着)よりも状態は良かったのでチャンスだと思っていました。4コーナーでは前を見ながらどこで抜け出していこうかなと思うくらい抜群の手応えでしたね。衰えは感じないし、これからも楽しみです。


取材・文:高橋華代子
写真:いちかんぽ(川村章子、森澤志津雄)