レースハイライト タイトル
dirt
2011年5月5日(祝木) 船橋競馬場 1600m

自信を持っての好騎乗で完勝
7歳にして充実のGT・6勝目

 かつては帝王賞JpnTの前哨戦的な位置づけだった、このかしわ記念JpnT。しかし年を追うごとに出走馬のレベルが高くなり、近年ではむしろフェブラリーステークスGTに続くダートのマイル王決定戦というような意味合いが強くなっている。
 今回は、昨年の中央・地方それぞれのダートチャンピオンによる対戦が実現。このレース3連覇のかかるエスポワールシチーが単勝1.4倍で1番人気だが、フリオーソとの馬連複は、なんと1.2倍。2頭の一騎打ちの様相。しかし明暗の分かれる結果となった。
 スタートでエスポワールシチーが出遅れた。タイミングが合わなかったのか、ダッシュがつかなかったのか、一瞬だが最後方に置かれた。一方のフリオーソは好スタート切ったが、外からダッシュよく飛び出したラヴェリータがハナを奪い、グランシュヴァリエも続き、フリオーソは3番手から。エスポワールシチーもすぐに挽回して1周目のゴール板あたりではフリオーソの直後、5番手につけた。
 3コーナー、絶好の手応えでフリオーソが前のラヴェリータをとらえにかかり、エスポワールシチーも外から半馬身ほどの差で続いた。このあたりまで、ファンの多くはやはり一騎打ちかと見ていたのではないだろうか。
 そして直線、先頭はフリオーソだが、内でラヴェリータが食い下がる。エスポワールシチーはと見れば、佐藤哲三騎手が5度、6度とムチを入れるも、前の2頭からはじわじわと離されていく。結果、フリオーソが先頭でゴール。離されずに食い下がったラヴェリータが3/4馬身差で2着。エスポワールシチーは1馬身半差の3着に敗れた。
 今回、レースのカギを握ったのはラヴェリータの武豊騎手だった。7枠11番フリオーソのひとつ外、8枠12番からのスタートにもかからず、積極的にハナ奪いにいった。どこかで見た場面だ。そう、スマートファルコンで勝ったJBCクラシックJpnT。あのときのスマートファルコンをイメージして、すぐ内にいるフリオーソ、そしてエスポワールシチーをまとめて負かしにいったのではないだろうか。結果的にフリオーソには敗れたが、チャンピオンホース2頭を相手にこの2着は好騎乗だろう。
 勝ったフリオーソは、スタンド前をゆっくりとウイニングラン。ファンの大きな声援に、戸崎圭太騎手は何度もガッツポーズで応えていた。川島正行調教師は「ゴールに入ったときのファンの拍手と声援が、いつもの3倍くらいに聞こえました」と。
 7歳にして今が一番充実期と言われているフリオーソだが、それは数字にもはっきりと表れている。昨年のかしわ記念からここまで8戦連続連対。これほど長期間まったく崩れなかったことはかつてない。またGT・JpnTはこれで6勝目になるが、年明けの川崎記念に続き、1年のうちにJpnTを2勝したのはこれが初めてのこと。この勢いなら、今年中にさらにビッグタイトルを積み重ねることができそうだ。
 次走はもちろん帝王賞JpnT。3日前にダイオライト記念JpnUを圧勝したスマートファルコンも、今年前半の最大目標を帝王賞としている。フリオーソにとっては、昨年終盤に悔しい思いをしたJBCクラシックJpnT、東京大賞典JpnTの雪辱なるかどうか。さらには立て直しを図ってのエスポワールシチーに、ドバイワールドカップで2着と好走したトランセンドも出走してくるようであれば、ダートの歴史に残る一戦となるだろう。
 さて、船橋競馬は震災の影響で2開催が中止となり、今開催は「東日本大震災復興支援競馬」として行われた。最終レース終了後には、船橋所属騎手による募金活動と並行して、チャリティーオークションも行われた。次々にステージに登場する騎手たちは、自身の勝負服などを提供。その最後に用意されていたのは、フリオーソが以前に使用していたメンコ、頭絡、蹄鉄のセットで、激しい競り合いの末、11万円で落札された。
戸崎圭太騎手
エスポワールシチーにはまだ勝ったことがなかったので、意識して乗りました。隣でエスポワールシチーが出遅れたのは見ていたので、自分が逃げてしまおうかと思いましたが、外のほうが速かったので、それを行かせてついていく形になりました。それでも雰囲気よくいいリズムで走ってくれて、いつでもゴーサインを出して反応してくれる手応えがありました。帝王賞は地方代表としていいレースを見せてくれると思います。
川島正行調教師
思い通りのレースをしてくれたし、地元で勝つというのは、やっぱりうれしいです。(前走後)ここまで順調に来ていたので、いい仕上がりで臨めたんじゃないかと思います。武騎手がスタートよく先に行って、あの位置についていったのは戸崎騎手の好判断だったと思います。直線は自信を持って見ていました。今年はドバイに行けなかったのがほんとうに残念だったので、オーナーとは、来年こそは行きましょうと話しました。

スタート後 各馬の位置取り争い
ゴール前 フリオーソが貫録の勝利
ウイニングラン
チャリティーオークションの様子
取材・文:斎藤修
写真:いちかんぽ(三戸森弘康、森澤志津雄、川村章子)、
斎藤修、NAR