レースハイライト タイトル
dirt
2011年12月14日(水) 川崎競馬場 1600m

スタートで躓くも余裕の勝利
目指すは海外のダービー

 季節にちなんだ装いで楽しませてくれる川崎競馬場名物の誘導馬。全日本2歳優駿JpnTが行われたこの日は、川崎所属で06年に東京ダービーを制したビービートルネードが川崎記念JpnTに続いて2度目の里帰りを果たしてレースに華を添えた。クリスマス前ということでトナカイ風のいでたちは何とも微笑ましい。
 それにしても、断然の主役となった中舘英二騎手のオーブルチェフの強さには恐れ入った。モノの違いとは、まさにこんな時に使うべき言葉であろう。

 ここまでのパフォーマンスからも単勝1.1倍と断然の1番人気に推されていたが、スタートで躓く痛恨とも言うべきほどのアクシデントには場内からも悲鳴がもれた。「落ちなければ勝てるくらい力は抜けていると思っていたんですが、それが落ちそうになるくらいだったのでビックリしました」と中舘騎手は振り返る。
 ヘヴンズパワーとメジャーアスリートがペースを作っていく中で、オーブルチェフは中団うしろから追走。「人間は慌てていましたが、落ち着いて乗っていれば大丈夫と馬が導いてくれた感じです」(中舘騎手)
 向正面中ほどから一気に先団へ押し上げると、直線では前のメジャーアスリートを軽く抜き去って先頭に躍り出た。「いつもより最後の手応えはありませんでしたが、向正面でロングスパートをかけているし着差以上の強さだったと思います。本当はもっと突き放すことができる馬なのに、僕のせいでこのくらいしか離せなかったのが残念です」と中舘騎手は反省しきりだったが、この馬の強さを一番近くで感じているからこその悔しさでもあるだろう。
 2着には3/4馬身差でメジャーアスリート、3着にはヴェアリアスムーンが入り、中央馬が上位を独占した。
 オーブルチェフは芝の新馬戦は敗れているが、ダートに路線変更後は2歳未勝利戦、プラタナス賞、北海道2歳優駿JpnV、そして全日本2歳優駿JpnTと無敵の強さで2歳ダートチャンピオンに輝いた。この後はUAEダービーやケンタッキーダービーなども視野に入れていくそうだ。
 一方で、地方最先着の4着には北海道のゴールドメダル、5着には岩手のアスペクトが入った。アスペクトの兄アテストが05年に2着に入ったのは記憶に新しい(優勝馬グレイスティアラ)。アスペクトは地元では砂をかぶったことがないほどにスピードの違いを見せてきたが、今回は中団から砂をかぶっても最後に伸びてきた内容は大きな収穫になっただろう。アスペクトは岩手競馬の明るい希望だ。
中舘英二騎手
もともとはスタートもうまくて折り合いもついて乗りやすい馬です。とても落ち着いていたし非の打ちどころがないくらい体調面は良かったので、もっと強い競馬をしたかったのに残念です。アクシデントにも負けないくらい強い馬だし、何の課題もありません。今のままで十分です。
萩原清調教師
このような強い馬を預からせていただいて光栄に思っています。彼(中舘騎手)を信頼していたのでレースの作戦は立てていません。スタートで躓いてしまいましたが、馬は頑張ってくれたし能力はかなりのものがありますね。向正面から追い上げていった脚は相当いいものがあると思います。

4コーナーでオーブルチェフ(手前)が先頭に立つ
5着と好走したアスペクト

取材・文:高橋華代子
写真:いちかんぽ(森澤志津雄、国分智)、NAR