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 全国各地の地方競馬場で行われる2歳主要競走7レースを10月18日(月)〜11月5日(金)の約3週間で短期集中施行するシリーズ(2008年創設)。春に行われる3歳馬の「ダービーウイーク」同様、各地の主要競走が短期間で楽しめる贅沢感や、先々への期待感を醸成できることが当シリーズ最大の魅力。また、未来優駿シリーズ各競走から適度な日程で行われるダートグレード競走(兵庫ジュニアグランプリ・全日本2歳優駿)へ向けた出走意識を高めることで、競走体系の整備促進に資することも期待されている。

 砂に刻まれる、3つのドラマ。
 第二幕 未来優駿 〜若馬に、大志を抱け。〜

※ サッポロクラシックカップは特別競走として施行されます。
※ 今年の南関東地区未来優駿対象競走は平和賞(昨年はハイセイコー記念)となります

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2010年 未来優駿の総括はこちらです。


平和賞
競走成績Movie
目指すは中央の大舞台
未勝利馬が実績馬を一蹴
 JBCデーの最終レースに組まれていた地方全国交流戦の平和賞は、昨年のハイセイコー記念に代わり、南関東での『未来優駿』に指定された一戦。石崎駿騎手が騎乗した牝馬ヴァインバッハの度肝を抜くパフォーマンスで、ダート競馬の祭典が締めくくられた。
 ちょうど7月下旬に遡る。ヴァインバッハが船橋競馬場に入ってから1本目の追い切りを行っていた。デビューしている馬?という錯覚に陥るほどの力強いフットワークで馬場を駆けていた姿には感動すら覚えた。
 「レベルはかなり高いですよ。この馬で中央の桜花賞を目指したい」と出川克己調教師。
 新馬戦は出遅れたことが致命的なロスとながったが、次元の違う末脚で2着に入り、負けて強しの印象を残した。
 通算500勝を挙げたばかりの出川克己調教師が、かつてアブクマポーロを手掛けていたことはあまりにも有名である。「馬が嫌々走るくらいなら走らせたくない」という考えで、馬に負担をかけずに、決して無理遣いをしないことでも知られている。今年、11月3日までの成績では、勝率、連対率ともに全国のトップにいる。
 そんな出川調教師が、まだ1戦のキャリアで1勝もしていない馬を、いきなり重賞にぶつけてきたのは、もちろんチャンスがあると見てのことだった。
 平和賞は北海道所属馬たちの活躍が目立つ。今回もオープン2勝馬イチバンボシや、盛岡のジュニアグランプリを制しているスクランブルエッグなど楽しみな面々が集結。ヴァインバッハは6番人気の評価だった。
 「道中は砂をかぶって行きっぷりが良くなくて、手応えがない中での追走でした」と石崎騎手。道中は中団後方の内めから進めていき、直線に入ってもその差は変わらず。「まだ体がしっかりしていないから、そこで大きく外に出すのも馬に負担がかかるし、内が開いていたからそこをつきました」(石崎騎手)。
 直線中ほどから内を強襲すると、前を進んでいた北海道勢を一気に飲み込みんだ。「砂が飛んでこなくなってから馬もやっとやる気を出してくれて、そこからの脚はすごかったですね。その脚が出たときには勝てると思いました」(石崎騎手)
 まだ2戦目のキャリアで、距離も一気に延長、あの狭いところをつく芸当はなかなかできる技ではない。「長年この仕事をやっていても、こういうのはビックリしますよ」と出川調教師をはじめ関係者一同、驚きの表情を浮かべていた。
 南関東の2歳牝馬路線の総決算は年末の東京2歳優駿牝馬なのだが、全日本2歳優駿JpnIへ向かって中央・地方他地区の強豪牡馬たちにぶつける公算も大きくなっているようだ。
 ヴァインバッハの今後から目が離せない。

石崎駿騎手
調教でも乗っているのでクセはつかんでいました。道中はフワフワしっぱなしで、ハミを取ってくれたのは最後だけでした。距離はどのくらいでもこなせると思いますが、気性的に子供の面があるので改善していってくれればもっと良いと思います。
出川克己調教師
これだけの力は十分にあると思っていても、まだクリアしなくてはいけない課題がたくさんあったので、学習能力が高くて大した馬だなぁとつくづく思いますね。スピード、フットワークなど走ることに関して能力は相当高いので、南関東だけに視野を絞らないように考えています。

取材・文:高橋華代子
写真:NAR、いちかんぽ(森澤志津雄、宮原政典)